ファーウェイ・ジャパンの端末戦略「日本市場戦略は第3段階に」

国内でも徐々に認知度を拡大している中国メーカーのファーウェイ。同社日本法人で端末営業を統括するチン・ヨウ氏に、ファーウェイの日本市場戦略を聞いた。

――従来はデータ通信端末が主力でしたが、最近、スマートフォンなどの音声端末を強化していますね。

チン 当社は2007年に日本の端末市場に参入し、データ通信カードを中心にラインナップを展開してきました。当時はフィーチャーフォンが全盛で、データ系端末は各社ともそれほど力を入れていなかったため、チャンスがあると考えたからです。その後、イー・モバイル向けに音声端末を2機種出しましたが、期待するほどの実績を残せませんでした。

しかし、フィーチャーフォンからスマートフォンに大きくトレンドが切り替わる中で、新たなチャンスが出てきたと感じています。中国本社でも特にAndroidスマートフォンの開発に積極的にリソースを投入しているので、この流れに乗り、スマートフォンを中心にラインナップを強化していきたいと考えています。

この9月には、ソフトバンクモバイルから「Vision SoftBank 007HW」が発売されます。Android 2.3を搭載したスマートフォン最新機種で、世界に先駆けてまず日本で投入します。また、イー・モバイルからはテンキーを搭載したスマートフォン「smartbar(S42HW)」、NTTドコモからはフィーチャーフォンですが「キッズケータイ HW-02C」がそれぞれ発売されます。来年にかけて、音声端末のラインナップを増やしていく方針です。

――スマートフォンの最新機種を日本で最初に発売するということは、それだけ日本市場を重視している現われなのですか。

チン 社内では、日本市場を特別なポジションと位置づけています。日本における端末開発は、これまで3つの段階を経てきました。第1段階が、本社で開発した製品、あるいは海外ですでに展開している製品に少し変更を加え、日本市場に投入する「浅いカスタマイゼーション」です。その代表例がデータ通信カード「D02HW」で、欧州で大ヒットしたものをイー・モバイルの周波数帯に対応させて発売しました。

次の段階が、ソフトウェアだけでなくハードウェアにも変更を加えることで日本のニーズに応える「より深いカスタマイゼーション」です。「Pocket WiFi(D25HW)」は、グローバル向けでは表面の5つのLEDを使ってステータス(状態)を表示していましたが、さまざまな調査の結果、日本向けには液晶画面を設け一目でステータスがわかるようにしました。

また、「PhotoVision SoftBank HW001」はUIを作り直し、メニュー構成などがグローバルモデルとは異なっています。D25HWは国内の累計販売台数は100万台を超え、HW001もたくさん販売できたので、日本のユーザーに納得していただける仕上がりになっているのだと自負しています。

そして現在は、日本で企画・仕様を策定した製品を本社で開発し、日本市場に投入する段階に入っています。例えば今年8月に発売した「Pocket WiFi(GP01)」は本社にはない製品で、旧モデルの「Pocket WiFi(D25HW)」のデザインや本体サイズを継承しつつ、日本のユーザーの要望を受けて、下り最大7.2Mbpsから同21Mbpsへと大幅に高速化しました。KDDIに供給しているデータ通信カード「Wi-Fi WALKER DATA06」「DATA07」も、国内独自企画です。

当社がモバイル・ブロードバンドと呼んでいるデータ通信端末だけでなく、スマートフォンも日本で企画した製品を来年にかけて市場に投入していきたいと考えています。

――欧米やインドに続き日本でも研究開発センターを設立しました。どのような役割を担っているのですか。

チン 1つは、先ほどの端末開発における日本企画の製品化で、日本のお客様のニーズを捉えて本社に提案し、開発を行うための重要な拠点になります。もう1つは、日本のサードパーティのデザインや特徴あるアプリケーションを商品に取り込むことです。さらに、日本の部材メーカーの最新技術を本社の製品に導入するための紹介役も担っています。

――スマートフォンでは海外メーカーの端末が国内市場でも受け入れられています。グローバル展開した方がコストメリットも出るのではありませんか。

チン 販売台数で見ると、フィーチャーフォンはローエンドモデルが最も多く、ハイエンドモデルが少ないピラミッド型の構造です。一方、スマートフォンはそれとは正反対で、ハイエンドモデルが一番売れる逆ピラミッド型になっています。世界で最もハイエンドモデルのスマートフォンを出している国は日本なので、日本市場で受け入れられる製品を作ることができれば、他国の市場も狙えるのではないかと見ています。

FeliCaやワンセグ搭載目指す

――日本のユーザーはこだわりが強いと言われます。ファーウェイ製品のどのような部分を日本向けに強化しなければならないと思われますか。

チン 音声端末は「おサイフケータイやワンセグ機能を搭載していると売れるというより、載っていなければユーザーの検討対象から外れる」と言われます。当社ではこれらの機能にまだ対応できていないので、フォローアップしなければなりません。

デザイン面の強化も課題です。日本人が求めているデザインや材質を本社に要求しても意味がないので、日本のサードパーティとのコラボレーションにより、短時間でキャッチアップしていきたいと考えています。

あとは、日本人が見たときに「ここをもう少しこうした方が……」と感じる細部の調整ですが、これは1日や2日で何とかできることではないので、継続的に商品を出すことでノウハウを積み重ねていきたいと思っています。

――国内外のメーカーが数多くある中で、どのようなブランドイメージを展開していくのですか。

チン 音声端末はコンシューマー向け製品のため、ブランド戦略が重要になってきます。本社でも今年は中国と英国におけるブランディングに注力し、来年以降は日本や米国、オーストラリアなどでのブランド力を強化する方針です。

日本で昨年までに発売された製品にはファーウェイのロゴがほとんど入っていませんでしたが、通信キャリアと交渉して、今年発売する製品からはできるだけロゴを載せるようにしています。音声端末については、一般の方の目に触れるような、従来とは違ったプロモーションを展開します。こうした取り組みにより、少しずつ当社の認知度を高めていきたいと思います。

月刊テレコミュニケーション2011年10月号から再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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