OSS/BSSが拓く未来 顧客要求への最適化も自動化へ

複雑化するネットワーク、障害予防への圧力、他業種との競争激化による収益性の低下──。通信事業者を取り巻く環境は厳しさを増しているが、進化したOSS/BSSが“打ち出の小槌”となる。

「昨年の大規模通信障害以降、問い合わせは増えている。根底にあるのが、手動の業務を自動化したいという要求だ」。OSS(Operation Support System)/BSS(Business Support System)統合ソリューションである「Netcracker」を提供するNEC ネットワークソリューション事業部門 BSS/OSS統括部 シニアマネージャーの横井裕氏は、通信事業者のこれらのシステムのニーズ増加を実感している。

NEC ネットワークソリューション事業部門 BSS/OSS統括部シニアマネージャー 横井裕氏

NEC ネットワークソリューション事業部門 BSS/OSS統括部シニアマネージャー 横井裕氏

2022年7月に発生したKDDIの通信障害は、業界全体の業務自動化を加速させるきっかけになった。通信業界の競争激化やコスト削減圧力の高まりは世界的潮流だが、こと国内の事業者に与えたインパクトは大きかった。事態を重く見た総務省が、事故発生から原則30分以内の報告を求める方針を打ち出したからなおさらである。

通信事業者のシステムは複雑化する一方だ。「仕様の成熟や進化に伴ってネットワークをアップデートしたくても、システムはサイロ化している。また、ネットワーク機器は専用機器から汎用サーバーやOS、仮想化基盤に変化したが、それらのバージョンアップの煩雑さも問題だ」と、ヒューレット・パッカード エンタープライズ(HPE) コミュニケーションテクノロジー事業本部 テクニカルプリセールス本部 シニアコンサルタントの山本幸治氏は述べる。

ヒューレット・パッカード エンタープライズ コミュニケーションテクノロジー事業本部 テクニカルプリセールス本部 シニアコンサルタントの山本幸治氏

ヒューレット・パッカード エンタープライズ コミュニケーションテクノロジー事業本部 テクニカルプリセールス本部
シニアコンサルタント 山本幸治氏

そうしたシステムを救う期待がかかるのが、ネットワーク運用を支援するOSSだ。平時の機器運用から障害対応まで、エンドツーエンドに渡って業務を自動化するソリューションが登場してきている。

また、ARPUが横ばいになるなか、通信事業者の成長ポイントは法人向けビジネスにある。法人顧客のニーズに応じたサービスを素早く提供することが浮沈の鍵を握っている。こうした面をサポートするのが、サービスの申込受付、料金計算・請求・回収などの業務自動化を担うBSSだ。

KDDIの自動化の成果

KDDI 技術統括本部 次世代自動化開発本部 オペレーション技術開発部 次世代監視システムG グループリーダーの鈴木悠祐氏は、OSSの開発に携わる中で、「昨年は大きな契機となった」と振り返る。

KDDI 技術統括本部 次世代自動化開発本部 オペレーション技術開発部 次世代監視システムG グループリーダーの鈴木悠祐氏

KDDI 技術統括本部 次世代自動化開発本部 オペレーション技術開発部 次世代監視システムG
グループリーダー 鈴木悠祐氏

KDDIはかねてより「スマートオペレーションプロジェクト」と呼ぶ取り組みを進めてきた。「オペレーターがマクロを自作して小さく自動化するのではなく、きちんと基盤を作り、全体を見た上で自動化を進めてきた」と鈴木氏。自動化への最初のかけ声こそトップダウンだったというが、OSSを利用する監視者やオペレーターを巻き込み、システム開発者とともに組織的に改善を重ねてきた。

スマートオペレーションの基本的な仕組みはこうだ(図表1)。フォールトマネジメント(FM)と呼ばれる、ネットワーク機器から取得できる障害管理の情報と、パフォーマンスマネジメント(PM)と呼ばれる、CPUやメモリの使用率といった機器の性能情報、あるいはセッション数やスループットなどの情報を集約する。この時点で対処法が明らかなアラームはゼロタッチで対応する。高度な分析が必要な場合は、サービス監視基盤が行う。例えばトラフィックが下がっているがFMのアラームが出ていない場合などに、FMとPMを組み合わせたコリレーション分析を走らせる。そして、その結果がダッシュボードに表示されオペレーターに対処法をサジェストし、ワンタッチでオペレーションが実行される。「一番簡単なケースだとダッシュボードの“OK”ボタンを押せば直るところまで簡易化されている」(鈴木氏)

図表1 KDDIにおける運用自動化の仕組み

図表1 KDDIにおける運用自動化の仕組み

こうして、肌感覚の作業量はそれまでの数分の1に削減。属人的な運用から脱却したことにより、メンテナンスも容易になった。現在、KDDIの無線、固定など全ドメインにおいて基本的にこの仕組みでネットワーク運用の自動化を果たしているという。

また、重大な障害が生じた際に通信事業者は30分以内に障害発生の日時や影響を受ける地域やサービス、復旧の見通しなど全12項目からなる周知・広報を行うことが総務省のガイドラインによって今年3月に定められた。スマートオペレーションでは、こうした周知のための一部項目の外部レポーティングの機能を実装し、迅速な報告を行う準備を整えているということだ。

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