――外資系キャリアながら東京に本社を持ち、また企業向けに特化してネットワークサービスを提供するなどユニークな事業展開をしています。改めて御社の特徴と強みについて教えてください。
ウォーリー 1999年に日本で創業し、社員の8割を日本人が占めていますが、全部で26もの国籍の社員がおり、顧客も約4割が日本でビジネスを展開している外資系企業と、国際色が強いというのが第1の特徴です。
また、1800社の顧客のうち45%が金融機関であることがKVHのもう1つの特徴をよく表しています。非常に要求レベルの高い企業から選ばれ続けていることが、我々のサービス品質とスキルの高さを裏付けています。
――そのネットワークサービスをベースに、近年はデータセンターやIaaS/ PaaS事業にも注力しています。
ウォーリー KVHは今、まさに移行期を迎えています。これまでの通信サービス中心の事業から「情報デリバリー・プラットフォーム」事業への移行を進めています。
我々のターゲットは、金融やメディア、製造業といった、“情報”を保護し、処理し、保存し、そして配信することで大きな価値を生み出す業界です。こうした情報を活用する業務を機能させるには、高品質なネットワークはもちろん、その他にもデータセンターやセキュリティ、マネージドサービスなど様々なパーツが必要になります。
情報デリバリー・プラットフォームとは、従来はそれぞれ別の事業者が提供していたネットワークやクラウドサービス、セキュリティなどをKVHが一元的にエンド・トゥ・エンドのソリューションとして提供するものです。
サービス統合へ組織も一新
――クラウド事業者や他の通信事業者も同様に、複合的なサービス提供を進めています。どのように差別化していくのでしょうか。
ウォーリー 従来型のクラウドプロバイダーは、ネットワークを提供する能力を持っていません。
一方、通信事業者はネットワークとクラウドサービスを提供することが可能ですが、規模が大きいこと、それから、複雑なサイロ型の組織構造であることが障害となります。通信サービスとクラウドサービスを提供するためのプロセス、要求されるスキル、システムはまったく異なります。データセンター部門、ネットワーク部門など、サービスごとに組織が分かれている環境下においては、KVHが目指すクラウドとネットワークの統合型サービスを提供することは不可能です。
KVHはそうした問題を解決するために、サービスごとの境界を廃し、組織やプロセスを一体化させるよう、編成を一新しました。
――金融などの既存顧客を中心に事業を広げていくのですか。
ウォーリー これまで得意としてきた業界以外にも広く展開し、今後5年以内で売上を2倍に成長させたいと考えています。
そこで、サービスをより使いやすくする環境作りにも注力しています。オンラインで容易にクラウドのインフラを購入できるWebポータル「Cloud GALAXY」を開設しました。画面上で必要なコンポーネントを選択するだけで、自動的にリソースがプロビジョニングされ、短期に利用開始できます。我々の運転コストを削減し、その分お客様にコストパフォーマンスの高いソリューションを提供できるようになりました。