――2009年7月にWiMAXの有料サービスを開始してから約半年が過ぎました。この間の事業展開について、どのように評価していますか。
田中 いろいろなことがありましたが、何とか予定通りに来たかなと思っています。
屋外基地局の建設も一時期、設置場所のオーナー様との交渉や設置工事の遅れに苦しめられましたが、何とかリカバリーして、09年12月末現在で電波発射は4752局になりました。
免許取得時の計画では09年度末で4000局を目標にしていたので、3カ月前倒しになっています。今では1カ月間に1000局弱の基地局建設ができる実力が付いてきており、年度末には7000局弱ぐらいになりそうです。最終的には2012年度末に人口カバー率93%を目標にしていますが、このままのペースでいけば1年早く達成できそうなペースです。
――加入者数は09年度末に数十万加入を目指したいという話でしたが、TCA(電気通信事業者協会)の発表によると、09年9月末時点で2万1700、12月末時点で6万3600となっています。計画よりやや遅れているのではありませんか。
田中 9月末の数字については社外の方から「少ない」と言われたのですが、我々はむしろ「結構よくやった」という印象を持っています。12月末の数字もほぼ予定通りです。
皆さんはNTTドコモさんやイー・モバイルさんと同じぐらいの契約数をいきなり取れると思っているのかもしれませんが、まだ開業半年ですし、エリアが拡大途中に加え販売チャネルの数もまだまだ少ない状況です。まずまずの結果といえるでしょう。
――販売チャネルの手応えはどうですか。
田中 MVNOはKDDIの他にISP、家電量販店、商社が中心で、特に量販店が頑張ってくださっています。当初はWebからの直接契約の方が多くなると予想していたのですが、現在はMVNOが上回っています。今年は代理店を含め販売チャネルを拡充していきます。
――WiMAXは理論値で下り最大40Mbps、上り最大10Mbpsの高速データ通信が可能です。実効速度の現状はどうなっていますか。
田中 東京23区内の基地局建設がほぼ完成したことで、同エリア内の幹線道路の約8割で10Mbps前後のスピードが出ています。こうした地域は、次のステップである屋外カバーから屋内の不感地対策に重点をシフトしつつあり、現在、小型レピータ(中継装置)の準備を進めているところです。
また、23区外の多摩地区、横浜、埼玉地区等は、さらに基地局の密度アップを推進し、WiMAXらしい速度が体験できるよう基地局整備を進めています。
実効速度を20Mbpsレベルに
――携帯電話は今後HSPAやLTEと高速化が進むことで、データ通信市場での競争がさらに激しくなると見られます。
田中 当社にとって速度は一番の訴求ポイントなので、他社が高速データ通信サービスを始めても、速度では負けないようにするつもりです。そこで、近々には端末のファームウェアをバージョンアップし、20Mbpsレベルまでもう一段、実効速度を上げる予定です。
――最大300Mbps以上の高速通信が可能になる次世代モバイルWiMAX規格「IEEE 802.16m」の導入についてはどのような計画ですか。
田中 システムの開発は順調に進んで来ています。2010年度中に公開試験をお見せしたいと考えています。