トッパンとNTTデータがCisco UCSを採用した理由――シスコがデータセンター事業説明会

シスコシステムズがデータセンター事業に関する説明会を開催。Cisco UCSの導入企業であるトッパンシステムソリューションズとNTTデータが採用理由などを語った。

シスコシステムズは2011年5月31日、データセンター事業に関する記者説明会を開催した。会見にはブレードサーバーとネットワークの統合製品である「Cisco UCS(Unified Computing System)」の導入企業2社も登場し、UCSの採用理由などを語った。

最初に登壇したシスコ専務執行役員の石本龍太郎氏は、「我々は『データセンターファブリック』という言い方を始めた」と、シスコのデータセンターソリューションの新しいキーワードを紹介した。

ユニファイドファブリック、ユニファイドネットワークサービス、ユニファイドコンピューティングの3つの基盤を統合したのが「データセンターファブリック」

この言葉は競合他社でも使われているものだが、シスコではサーバーからストレージ、ネットワークまで、データセンター基盤全体の統合といった意味で使っている。具体的には、FCoEによりストレージネットワークをイーサネットに統合する「ユニファイドファブリック」、ブレードサーバーとネットワークなどを統合した「ユニファイドコンピューティング」、データセンターネットワークやサーバーのアプリケーション配信などを統合する「ユニファイドネットワークサービス」の3つの基盤が、「基本的に1つのオペレーティングシステム(Cisco NX-OS)で動く」(石本氏)という。

石本氏はデータセンター事業の現状についても語った。UCSのユーザー数は全世界で5400社を超え、「日本でも3ケタを超えるお客様がUCSを採用している」とのことだ。また、シスコ自身もUCSを自社で活用しており、オラクル環境およびSAP ERPをUCSへ移行したほか、研究開発用の社内IaaSをUCSで構築し、TCOやデリバリー時間の大幅削減、処理速度の向上などを実現したという。

社内IaaSにUCSを採用したことで、TCOとデリバリー時間をどれだけ削減できたかをグラフ化したもの。現在は左から3番目の状態で、今後100%のUCSへの移行を目指す。また、SAP ERPのUCSへの移行により、アプリケーションの処理時間は以前のUNIX環境と比べて、半分以下に短縮されたという

続いて登場したのは凸版印刷の100%子会社、トッパンシステムソリューションズの斎藤伸雄氏である。データセンター事業「TOPICA」を展開する同社は、仮想ホスティングサービス「VMDC」を提供するにあたってUCSを採用した。ベンダー選定では、低価格、短納期、柔軟性、運用コストなどを重視したというが、UCSを選択した理由の1つは「仮想化の弱点といわれるI/Oのスピード」。仮想化環境ではネットワークがボトルネックになることが多いが、「ネットワークに強いシスコなら間違いないだろう」と考えたそうだ。

トッパンシステムソリューションズ ITサービス本部 サービスインテグレーション部 部長 斎藤伸雄氏
トッパンシステムソリューションズ ITサービス本部 サービスインテグレーション部 部長 斎藤伸雄氏

ちなみに同社では以前、当時出たばかりのシスコのロードバランサーを導入して「痛い目に遭った経験」があるとのこと。今回は、そのときに得た「新しいものには手を出すな」という教訓をくつがえしての採用だった。UCSはシスコ初のサーバー製品だが、この点については「よく考えたらサーバーの技術は枯れた技術」と判断したという。

また、重視したポイントの1つである短納期については、昨年の11月ごろにベンダーが決定し今年2月にはサービスインと「非常に短い期間でサービスを立ち上げられた」(斎藤氏)。

短期立ち上げもトッパンシステムソリューションズの導入事例のポイント。また、シスコのハンズオントレーニングの充実ぶりも斎藤氏は高く評価していた

ユーザー企業のもう1社はNTTデータである。NTTデータでは自社で評価・検証したうえで企業にシステム提案を行っているが、登壇した小林武博氏はアプリケーションを動かすシステム基盤の評価・検証の担当。同社では約2年前に自社のシステム基盤の更改の検討を始めたが、評価・検証も兼ねてUCSを採用した。

NTTデータ 基盤システム事業本部 システム方式技術ビジネスユニット 第二技術統括部 第二技術担当 部長 小林武博氏
NTTデータ 基盤システム事業本部 システム方式技術ビジネスユニット 第二技術統括部 第二技術担当 部長 小林武博氏

NTTデータではシステム更改にあたって「TCOの50%削減」という目標を掲げたが、小林氏によれば、これを実現するうえでのポイントは運用コストだったという。UCSと通常のブレードサーバーとのコストを比較したところ、「運用コストの上がり方がUCSとブレードサーバーでは違った。UCSの場合、UCS Managerで一元管理できるため、サーバーの台数が増えても運用性が悪くならない」と小林氏は説明した。このUCS Managerについては、トッパンシステムソリューションズの斎藤氏も「エンジニアに非常に評判がいい」と語っている。冒頭でデータセンターファブリックについて紹介したが、サーバーやネットワーク、ストレージなどデータセンター基盤を効率的に管理できるのがシスコの強みというわけである。

UCSへのシステム更改により、写真の通りTCOは50%削減できる見込みだという

シスコの石本氏はさらにアプリケーションレイヤの統合管理についても検討中であることを明かしたうえで、「ミドルウェアやOSもある。こういったものをどう連携させ、どう管理していくかが、今後の肝になってくる」と語り、統合管理できる範囲を一層拡大していきたい考えを示した。

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