<特集>デジタル田園都市国家構想「高齢者8割の離島を元気に」山形県酒田市・飛島スマートアイランドのDX

人口200人足らず、高齢化率80%の離島を巡る取り組みが、2022年“夏のDigi田甲子園”の実装部門で優勝を飾った。通信環境の脆弱さも含め様々な課題を乗り越えた原動力は何だったのか。

2022年3月末の人口は173人、平均年齢は75歳──。

山形県酒田市の北西39kmに浮かぶ飛島は、バードウォッチャーや釣り客のリピーターも多い観光名所だ。様々な野花に300種の渡り鳥、穴場のビーチといった自然の魅力と、コンビニも信号機もない独特の空気に魅了される人も少なくない。

そんな飛島が直面するのが少子高齢化だ。1941年の1788人をピークに人口は10分の1に減少。高齢化率は80.4%と国内平均(28%)を大きく上回る。このままでは、島の活力が減退するのは避けられない。

住民参加型で課題を抽出

この島で今、住民生活を支えるためのDXが進んでいる。国土交通省の離島振興策である令和3年度(2021年度)スマートアイランド推進実証調査に採択された「飛島スマートアイランドプロジェクト」だ。

島全域が国定公園に指定され、釣りや海水浴、バードウォッチング等が楽しめる飛島

島全域が国定公園に指定され、釣りや海水浴、バードウォッチング等が楽しめる飛島。人口減少・高齢化等による課題を解消すべく、2021年度からスマートアイランドプロジェクトを推進している。住民の買物支援、観光客へのサービス拡充を目的にLINEを活用したスマートオーダーシステム(右)を開発。注文した品は、狭い道も苦にしない小型EV(下)で配送する(画像:飛島スマートアイランドプロジェクトの紹介動画より)

このプロジェクトで目指したのは主に次の3点。1つめが高齢者等の移動弱者への買い物支援、2つめが観光客への食事・サービス提供の充実、3つめがゴミ問題の解消だ。酒田市でデジタル変革戦略室長を務める本間義紀氏によれば、「島内に買い物をする場所がない。海が荒れると本土との輸送が途絶え、高齢者は移動にも課題を抱えている。島内の商店に生活用品や食料品を蓄えて売るシステムが崩壊しつつあった」という。これは住民生活のみならず、観光客へのサービス提供にも悪影響を及ぼしていた。

酒田市 企画部 デジタル変革調整監 兼 デジタル変革戦略室長 本間義紀氏

酒田市 企画部 デジタル変革調整監 兼 デジタル変革戦略室長 本間義紀氏

ゴミ問題とは、海岸に溜まる漂着ゴミの運搬・処理のことである。飛島の居住地は本土に近い東側に偏っており、西海岸には季節風によりゴミが漂着する。人口減と高齢化により、その運搬・処理が重荷となっていた。これらの課題は、飛島の振興を目的として2018年に県・市が立ち上げ、島民の3分の1が参加したワークショップで挙がったものだという。

酒田市は2020年にNTTデータ、NTT東日本、東北公益文科大学との4者で市のデジタル変革を推進するための連携協定を締結していた。この枠組みをベースに、飛島住民で構成するとびしま未来協議会、若手住民が設立した合同会社とびしまが加わり、飛島スマートアイランドプロジェクトの推進体制を整えた。

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