円安でクラウドに黄色信号
最近の円安で注目されているのが、クラウドのコストである。AWSやAzure、GCPといったマルチクラウドを用途に応じて利用することは今や当たり前になっており、通信事業者も例外ではない。クラウドの利用費をドルで支払っている企業にとってはコスト削減が急務となっている。
米調査会社のガートナーは、企業が利用するSaaSの30%以上が未使用だったとする調査結果を報告している。「企業はクラウドコストの低減や可視化も図る必要が出てきた」とマイクロフォーカスエンタープライズ エンタープライズ営業本部 本部長の和田馨氏は語る(図表3)。
図表3 クラウドコスト管理におけるチャレンジ
そこで、マイクロフォーカスではクラウドを横断的に可視化・管理するツールとして「Hybrid CloudManagement X(HCMX)」を提供している。
HCMXはマルチクラウドを管理するためのオーケストレーションツールで、1つのポータルに各環境で利用しているサービスを一覧化(カタログ化)し、アグリゲーションすることが可能となっている。
クラウドサービスを利用する際、HCMXを必ず経由させることで、ユーザーにとっても管理者にとっても一元的かつリアルタイムな可視化が可能になり、コスト削減につながる。また、HCMXの可視化・レポート機能を使えば、例えばリージョン別、インスタンス別など様々な視点で可視化し、AIによるコスト削減提案もされるという(図表4)。
図表4 マルチクラウドのコスト可視化とレポートイメージ
自動化、鶏が先か卵が先か
ここまで通信事業者のシステムの課題とそれを解決するソリューションを紹介してきたが、人材不足が加速する中、とにかく急がなければならないのが業務の自動化である。
「テレコムの世界でも、仮想化やコンテナなどのクラウド技術に精通した人材を中心に、IT人材の獲得競争がかなり厳しくなっている」とNEC ネットワークサービスビジネスユニットネットワークソリューション事業部門BSS/OSS事業統括部 運用自動化インキュベーショングループ ディレクターの渡邉正弘氏は話す。
人手が足りていないから自動化を進めたいのに、自動化を進めるための人手が足りていない──。鶏が先か卵が先かという苦しい状況だが、悠長にはしていられない。「現場ではいわゆる“匠”と呼ばれる方の技術に頼って運用している場面も多いが、そのノウハウが意外とドキュメントに落ちていなかったりする。彼らが退職の時期を迎えつつあり、その前に自動化の仕組みを組み入れていくことが必要だ」と渡邉氏は警鐘を鳴らした。
(月刊テレコミュニケーション 2023年1月号より転載)