ベストプラクティスへの標準化を
業界団体の「TM Forum(TMF)」は、BSS/OSSのベストプラクティスを策定している。TMFには世界の主要な通信事業者やベンダーなど850社以上が加入しており、次世代BSS/OSSのアーキテクチャについても検討を進めてきた。
「近年は通信事業者のオペレーションやシステム構成について、ベストプラクティスが発見されている。UIなどは時代に合わせて変える必要もあり、作り込みは柔軟に行う必要があるだろうが、TMFのベストプラクティスを積極的に活用すべき状況になっている」と横井氏は説明する。
ITシステムを構築するにあたっては、各機能の独立性が高い疎結合なシステムが一般的に推奨されている。TMFにおいてもBSS/OSSには疎結合なアーキテクチャを推奨しており、導入前後を比較したイメージを示したのが図表2だ。「TMFのアーキテクチャに準拠していないレガシーなシステムでは、内部がブラックボックス化およびサイロ化している。実際に、我々も一部の改修を依頼された際、関連機能や影響範囲を調査するだけで1カ月以上かかることもあった。それに対してTMFに準拠していれば、関連機能や影響範囲も明確かつ極小化するため、品質改善につなげられる」と横井氏。
特に、他社と差別化のしにくい非コアな領域においては、内製による作り込みを避け、業界標準の仕組みを活用するべきだろう。
図表2 TMFフレームワーク導入イメージ(画像クリックで拡大)
各システムを連携
サイロ化したシステムが通信事業者の生産性を低下させていることを先に述べた。
そこで、各システムをつなぐための単一のプラットフォームを採用する通信事業者も出てきている。例えば、ServiceNowの提供するPaaSの「NowPlatform」では、あらゆるシステムを単一画面から操作・管理することが可能だという。各システムとオペレーションを可視化し、SDNやAnsibleといったツール、あるいは専用のSaaSで自動化することも可能となっている。松田氏は「BSSやOSSなど各システムのハブになる」と説明する。
Now Platformについて「TMFが定めたオープンAPI仕様に準拠しているため、通信事業者が利用する様々なシステムと接続できる点が強み」と松田氏は言う。TMFのオープンAPIに準拠したシステムは多く、「システム同士をつなげてデータ連携しようという単純な話だが、それで得られる恩恵は大きい。マニュアル業務が自動化・可視化され、コストが下がるだけでなく、サービスの顧客満足度も高まる。サービスを市場に投入する期間も短縮される」(松田氏)