ローカル5Gサミット2022が開催 総務省、南紀白浜空港らが講演

「ローカル5Gサミット 2022」が11月17日、東京・御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターで開催された。導入コストが低廉化し、いよいよ普及期に入ったローカル5Gについて、最新の知見を持つ講師陣が登壇した。総務省の入江晃史氏による基調講演と、南紀白浜エアポートの池田直隆氏による特別講演をレポートする。

南紀白浜空港 池田氏 DXで地方空港の課題を解決

特別講演では、南紀白浜エアポート オペレーションユニット長の池田直隆氏が「ローカル5G活用により実現、地方空港のDX(デジタルトランスフォーメーション)」と題し、和歌山県・南紀白浜空港の取り組みを語った。

南紀白浜エアポート オペレーションユニット長の池田直隆氏

南紀白浜エアポート オペレーションユニット長の池田直隆氏

近年、国内の空港では、民間企業へ運営権を売却するコンセッションが広がっているが、南紀白浜空港もその1つだ。池田氏は、その運営会社である南紀白浜エアポートで「空港型地方創成」に挑戦している。その一環として今年3月、ローカル5Gを整備した(参考記事:ローカル5Gを全国の空港に 1日に3便だけ和歌山・南紀白浜空港の挑戦)。

池田氏は最初に、地方空港を取り巻く状況を解説した。日本全国には97空港が存在するが、約8割の乗降客が羽田、成田、関空など上位8空港に集中している。南紀白浜空港の乗降客順位は57位だが、池田氏によればこの順位はつまり「平均的な地方空港」であるという。

地方空港を取り巻く状況を解説する南紀白浜エアポートの池田直隆氏

地方空港を取り巻く状況を解説する南紀白浜エアポートの池田直隆氏

南紀白浜空港に限らず、地方空港は労働力・技術力の継続的な確保や資金面の問題などの課題を共通して抱えている。これらの課題を解決し、空港を維持していくためにはDXが不可欠だ。

池田氏が取り上げたDXの取り組みは次の3つだ。まず、案内ロボットである。

地方空港は常に人材の確保に悩まされている。空港といえば華やかなイメージがあるが、実際には案内や清掃といった裏方の役割が重要だ。しかし、こうした労働集約型の業務は、求職者が少なく定着率も低い。そこで池田氏は、業務を効率化し多機能化することが必要だと考えた。

その答えが案内ロボットだ。このロボットは客の要望に応じて施設案内をするだけではなく、案内のない時はデジタルサイネージとして広告を表示する。このロボットを、NECの協力のもと3カ月で開発したというから驚きだ。ロボットはローカル5Gで制御している。

次に、スマート点検である。航空法の規定で、空港は周辺の空間は、障害物がない状態にしておかなければならない。このことを制限表面管理と呼ぶ。建物はもちろん、やっかいなのは日々生長する植栽である。以前は目視で植栽の制限表面管理を行っていたが、3D-LiDARとローカル5Gでデジタル化した。MRデバイスを通して管理対象の空間を見れば、突出の有無が即時に判断できる。ベテラン職員の経験に頼った属人的業務を大きく効率化した好例となったという。

最後に、MR空港体験だ。「空港型地方創生」の実現のためには、飛行機に乗らない人にも、空港に来てもらうことが必要となる。その試みの1つである空港バックヤードツアーは、着陸シーンが間近で見られるとあって人気を博していた。ところが、このツアーは1日3便の着陸時にしか実施できないにもかかわらず、着陸前後は空港職員の業務ピークアワーである。朝一番の便は特に多忙だ。また、職員体制の薄い土日はツアーを断ることも多かったという。つまり、業務が飛行機の離着陸前後に集中し、それ以外は比較的余裕があるという偏りがあることが、バックヤードツアーの実施から浮き彫りになった。ここから、空港業務の平準化という大きな課題が見えてきた。

この課題を、ローカル5GとMRデバイスを活用した、バーチャルな見学ツアーによって解決しようとしている。参加者はバーチャル空間上で飛行機をペイントし、その飛行機の着陸をMRデバイスを通して鑑賞することができる。今年8月に体験会を実施したところ、一般参加者からは「貴重な体験でとても楽しい」「おもしろい体験」、空港職員からは「通常業務への支障がない」「子どもたちの笑顔を見られた」との声が上がり、双方から好評を得たとのことだ。

このように、南紀白浜空港はローカル5Gを活用し、顧客サービスや施設の維持管理の品質向上という課題解決に結びつけている。先進的な取り組みを次々と行うのは、“地方空港の唯一の武器”(池田氏)であるリアルアセット、つまり滑走路やターミナルビルなどの施設を使い、空港に技術を導入したい企業や、国交省にアピールすることも狙いであるという。池田氏は「ぜひ南紀白浜に足を運んでほしい」と参加者に呼びかけ、講演を締めくくった。

さらにローカル5Gサミット 2022では、シスコシステムズの高橋敦氏による「次世代のビジネス/社会を見据えた、これからのローカル5G活用」、東陽テクニカの竹野浩二氏による「ローカル5GのRAN設計構築と品質保証」、NTT東日本の渡辺憲一氏による「産業DXを加速させるローカル5G/ギガらく5G」、丸文の渡邊雅史氏による「誰でも取り組めるローカル5G ~小さくはじめて、大きく育てる5Gインフラ~」、SMFLレンタルの長谷川大輔氏・吉田学氏とスリーダブリューの植田敦氏による「あなたの会社に合ったローカル5Gの選び方 ~正しい機器の選び方、導入の方法、レンタルでのコスト削減~」の講演が行われた。参加者はそれぞれの講演に熱心に耳を傾けていた。また、展示会場には構造計画研究所、日本アンテナ、ハイテクインター、丸文の各社が出展。実機を用いたデモ展示やソリューション紹介に多くの参加者の視線が注がれていた。ローカル5G導入への熱意を肌で感じる1日となった。

講演はオンデマンド配信によって後日視聴が可能だ。配信開始は12月1日を予定している。

<ローカル5Gサミット2022>
各講演のオンデマンド配信はこちら
https://www.ric.co.jp/expo/local5g2022/
※期間:12/1(木)~12/23(金)予定

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