<特集>NTN最新動向 非地上系ネットワークは通信市場をどう変革するか?NTNが海運に革命を起こす 海の未来を支える無人運航船

今年2月、東京港から伊勢湾・津松阪港の区間で、日本財団が推進する無人運航実証が行われた。多数の船舶が行き交う過密海域での実証は世界初。衛星・LTE通信のハイブリッドシステムがその成功を支えた。

国内の英知を結集し、2025年までに無人運航船の実用化を目指す──。

日本財団の主導により2020年にスタートした「MEGURI2040」プロジェクトが今年2月、世界初の無人運航実証を成功させた。

同プロジェクトでは5つのコンソーシアムが様々な船種の無人運航船を開発している。そのうち30の日本企業が参画する「DFFAS(Designingthe Future of Full Autonomous Ship)」が、陸上支援センター(千葉市)からの遠隔操船を含む無人運航船システムを実証。コンテナ船「すざく」(下写真)を用いて、東京港と津松阪港(伊勢湾)を往復する約790kmの区間を無人航行した(図表1)。

図表1 無人運航実証の航行ルート

図表1 無人運航実証の航行ルート

実証に用いたコンテナ船「すざく」

実証に用いたコンテナ船「すざく」。全長約94mで、総トン数は749t(日本財団発表資料より)

東京湾は、1日当たりの航行隻数が約500隻という超過密海域だ。年間12万隻以上が通航するマラッカ・シンガポール海峡でも1日約320隻とで、東京湾のトラフィックは群を抜く。DFFASに参画するNTTの堀茂弘氏(Space Compass 共同CEO)は、「最も難度の高い海域を商用ベースのコンテナ船で無人運航したのはDFFASだけ」と、その意義を強調する。

LTEと衛星回線を同時使用

無人運航システムは、船舶側システムと、運航を監視・支援する陸上側システム、そして両者をつなぐ通信システムで構成される(図表2)。

図表2 実証実験で使用した通信システムの概要

図表2 実証実験で使用した通信システムの概要

船舶側システムの中核は、オートパイロット機能を備える自動避航プログラム(ARS)だ。

海上には旅客船や貨物船、漁船、レジャー船など様々な船舶が存在するが、規模・船種を問わず相互通信する仕組みは普及していない。船長は常に周辺に目を配り、衝突事故を防ぐために航路を変更しなければならない。ARSはこれを自動で行う。監視カメラ/LiDAR等のセンサー情報を基に、周辺の船・障害物を検知して衝突リスクを自動判定し、航行ルートを変更する。

陸上側システムは船を常時監視し、万一の際には遠隔操作を行う。

これをつなぐ通信システムの開発を手掛けたのは、NTTコミュニケーションズとNTTドコモだ。大型船には従来から衛星通信設備が搭載されているが、「無人運航には、これまでよりも広帯域かつ信頼性の高い通信が必要」(堀氏)なことから、衛星通信とLTEを併用するハイブリッド型の通信システムを開発した。

今回の航行ルートでは、約8割のエリアでLTEが使用可能という。その圏内では衛星通信とLTEを同時に使用した広帯域通信を行い、どちらかの回線が途切れた場合には、一方で通信を継続する。衛星回線には、携帯型端末を用いる固定衛星通信サービスのVSATシステムを採用。帯域・遅延性能が異なる2回線(図中のVSAT1とVSAT2)を併用した。

続きのページは、会員の方のみ閲覧していただけます。

RELATED ARTICLE関連記事

SPECIAL TOPICスペシャルトピック

スペシャルトピック一覧

FEATURE特集

NEW ARTICLES新着記事

記事一覧

WHITE PAPERホワイトペーパー

ホワイトペーパー一覧
×
無料会員登録

無料会員登録をすると、本サイトのすべての記事を閲覧いただけます。
また、最新記事やイベント・セミナーの情報など、ビジネスに役立つ情報を掲載したメールマガジンをお届けいたします。