2008年以降の不況下でも順当な成長を続けてきたテレビ会議・Web会議市場。テレビ会議についてはHD映像への対応と端末の低価格化が進んだ。Web会議についてはASP/SaaS型のサービスが市場を牽引。中堅・中小企業でもビデオを活用してコラボレーションを効率化できるようになった。
移動・出張費の削減、意思決定の迅速化といった効果は、すでに企業の間に広く浸透している。裾野の広がりを背景に、今後も有望市場の1つであることに変わりはないだろう。
2011年の注目点としては、次の3つを挙げたい。
1つ目は競争の激化だ。アバイアがテレビ会議システムを発表し、シャープがクラウド型でテレビ会議・Web会議を提供する新会社iDeepソリューションズを設立したのをはじめ、この市場への参入が相次いでいる。テレビ会議・Web会議の選択肢は増える一方だ。ただし、「市場はまだ拡大している最中で相当に余力がある」とIDC Japanの眞鍋敬リサーチマネージャーは話す。価格競争が激化する状況にはまだ遠く、新規参入ベンダーも含めて市場開拓がさらに進む1年となりそうだ。
2つ目は、テレビ会議の差別化要因が変化している点だ。各社の新製品はほぼHD対応となり、端末価格も低廉なものが並ぶ。ハード面では差別化が難しい状況で、映像データの圧縮率を高めることでネットワーク帯域を節約し、運用コストをより低くする方向へと競争のポイントが移ってきている。大規模な事例も増えてきており、費用対効果をより高めるうえで、ますます重要になるだろう。
なお、利用の裾野が広がっていることもあり、リモコンの操作性、会議予約の簡便さなどITリテラシーを問わないユーザーフレンドリーな作りも従来以上に大切だ。
3つ目の注目ポイントは多地点接続サービスだ。高価な多地点接続装置(MCU)を自社に導入する必要なく、クラウド型でその機能を利用できるサービスが増えている。NTTビズリンクやKDDI、ソフトバンク等が提供しており、SD・HD端末の混在環境で利用できるものや、端末もレンタルできるものなどさまざまな形態がある。導入コストを抑えるために採用する企業が増えるだろう。