3.2.4 基盤構築は専門部隊に任せ方針や利用方法の検討に注力
パッケージの標準機能やカスタマイズ要件の取捨選択など、Nextiの機能設計以外にも、急がねばならないタスクが山積していました。それらを実質2ヶ月という限られた期間で並行して進めていく必要がありました。具体的には以下のようなものです。
(1)基盤インフラ整備(ハードウェア・ネットワーク・OSなど)
(2)サイトの利用規約やポリシーの決定
(3)サイトロゴとデザインの決定
(4)トライアルの準備・実施
なお、基盤インフラ整備については、社内システムの基盤整備を担当している部署に全面的に協力を仰ぎました。そのおかげでWGメンバーは残りのタスクに注力でき、ポリシーや利用形態、目指すゴールなどについての議論に集中できました。
3.2.5 オープン前のトライアルでは「こうあってほしい」姿を構築
Nextiを全社へ展開する2週間ほど前、リスペクターズおよび取り組み趣旨に賛同してくれた社内メンバーの70名程の限定メンバーでトライアルを実施しました。このトライアルでは、「仲間を招待する」機能以外の全ての機能を開放し、動作確認を実施しています。
このトライアル期間内で、確認テストでは発見できなかった潜在的な不具合を修正することができ、同時に使用感などについての意見を収集しました。その結果、今後の機能追加につながる要望や、当初想定していなかったアイデアも含め約50件が提起され、結果的にセキュリティレベルや使い勝手が向上しました。
また、わざと荒れた書き込みをして、運営側で模擬的に対処を施してみたときに、Nexti上では他のユーザーからどう見えるかなどの予行演習も実施しました。普段からシステム構築に携わっているSEの性なのか、システムを見ると、ついあれこれいじったり、突拍子もない使い方をしてみたり・・・そのおかげで、様々な角度からシステムを検証できました。
さらにトライアルでは、リスペクターズが「Nextiはこうあってほしい」と考える“小世界”を構築しました。具体的には、プロフィール欄はできるだけ埋め、顔写真には本人の画像を掲載する、ONとOFFの書き込み比率は半分くらい、日記には必ずコメントを付ける、コミュニティは真面目なものからユルいものまで多種揃える、などでした。
そこまでトライアルに含めたのは、参加したてのユーザーも既にある小世界をみれば、使い方に迷うことがないと考えたからです。後から振り返ると、登録者数が爆発的に増加したNextiにおいて、社員一人ひとりに当初の思想や目的を伝えることはままなりませんでしたが、小世界を通じて“ありたい姿”を提示できたという点で、トライアルは十分過ぎる役割を果たしました。
3.2.6 「永遠のベータ版」~ユーザーによるツール拡充で使い勝手がさらに向上
Nextiの開発においては、社内SNSはあくまでも社内コミュニケーションを活性化させ、ひいてはセクショナリズムを打破するための手段と割り切り、そのために必要な機能とは何かを常に念頭に置きました。一方、Nextiのオープン後は、リスペクターズ以外のユーザーがNextiをさらに便利に使いこなすツールを独自に開発し、Nextiにアドオンするという事例も発生しています。また、メンバーが様々な管理者用ツールを自発的に開発しました。ログ分析やFAQ自動生成、利用状況レポートなどのツールです。
Nextiでは最初からフルセットの機能は具備せず、実現したい最小限の機能で改善の余地がある「β(ベータ)版」としてサービスを開始しました。そして、サービス開始後にはユーザーの声も取り入れつつ、「ユーザーや管理者といった垣根を越えて、Nextiがさらに良くなるための品質向上や機能追加を実施していく」という開発スタイルを採っています。これは、SNSのような「ユーザー自身がコンテンツを作成・公開でき、ユーザー間の共同作業によって、ひとつの方向性ができていく」という“Web2.0的”なサービスにマッチした開発方法だと言えるでしょう。
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