キーパーソンが語る

「ミリ波5Gの課題に効果歴然」東工大・阪口教授の超スマート社会論

聞き手◎太田智晴(編集部) 2021.11.11

  • Teitter
  • facebook
  • 印刷

東京工業大学 教授 阪口啓氏

5G最大の特徴といえる「ミリ波」。その標準化に大きな役割を果たした阪口教授が、ミリ波5Gの課題を解決する「効果歴然」の策を提示した。これにより一気に加速すると期待されるミリ波5Gを活用したイノベーション。「超スマート社会は『コンセプト』から『事業』の段階へと移り始めている」と話す阪口教授に、5G/6G時代に起こる「大革命」の本質を聞いた。


――日本で5Gの商用サービスが始まり、1年半が経ちました。5Gの最大の特徴の1つであるミリ波5Gの実現に大きく寄与した阪口先生から、5Gの現状はどう見えていますか。

阪口 日本のキャリアと政府が、これほど早く28GHz帯を推進してくれるとは予想していないところがありましたので、期待以上に早く立ち上がったというのが私の印象です。

韓国は、世界に先駆けて5Gサービスを開始しましたが、2019年、2020年はミリ波に手を付けられませんでした。今、ようやく重い腰を上げようとしているところだと思います。

いち早くミリ波で5Gを始めたアメリカも、あれは「プレ5G」を用いたFWAのサービスであって、ミリ波を用いたアクセスサービスは本格的には実施していなかったと思います。

対して、日本は最初からミリ波を立ち上げたのですから立派です。

――私などは「5G=ミリ波」という期待が強すぎたせいか、「なかなか整備が進まない」という印象も持っていたのですが、世界的に見ると日本は進んでいるのですね。

阪口 確かに東京オリンピック・パラリンピックが延期され、さらに無観客となったため、5Gの“見せどころ”はなくなってしまいました。私自身もそうですが、たくさんの方がいろいろ仕込んでいたのに、結局何もできませんでした。コロナが始まる前まで非常に順調に進んでいたのが、コロナの影響でほぼ全ストップのような状況になり、もう1回やり直しというのが現状です。

とはいえ、商用化、実用化という意味では、日本のキャリアは先頭を走っていると考えています。

 

阪口啓 東京工業大学 教授


ミリ波5G誕生の背景――今でこそミリ波は5Gに必須の要素と当たり前のように考えられていますが、5Gの議論が始まった当初はそうではありませんでした。阪口先生の提案が重要な契機となったわけですが、その経緯を聞かせてください。

阪口 もともとミリ波をアクセスネットワークに使うための研究は日本が先行していて、2000年くらいの段階で基本的な試作はできていました。特に引っ張っておられたのが東北大学の加藤修三先生で、ベンダーも研究開発を熱心に進めていました。ところが、そこにリーマンショックが起き、ミリ波の研究を続けられないという状況に直面します。

このとき、「ミリ波の研究の出口を見出さないと、ミリ波業界自体が沈んでしまう。たくさんの研究者が職を失ってしまう」と動かれた1人が、今も総務省の様々な委員会をリードされている元東工大の安藤真先生です。

安藤先生の依頼を受け、「セルラーをミリ波の出口にできないか」と取り組み始めたのが、私がミリ波の研究を開始するきっかけでした。

かつて、携帯電話には「ミリ波は絶対に入らない」と考えられてきました。私自身もミリ波の研究を始めるまでは、実は賛成ではありませんでした。5Gにミリ波を使うアイデアを私が2012年に発表すると、日本のキャリア全社が反対しました。

――阪口先生は2012年、ミリ波のスモールセルでデータプレーン、既存周波数のマクロセルで制御プレーンという、異なる周波数・セルを組み合わせるヘテロジニアスネットワークのコンセプトを考えだし、ミリ波にセルラーへの出口を開きます。5Gのベースアーキテクチャとして採用された考え方ですが、すぐに受け容れられたわけではなかったのですね。

阪口 それで「MiWEBA(Millimetre-Wave Evolution for Backhaul and Access)」という日欧連携のプロジェクトを2013年に立ち上げました。これ以前、ミリ波は5Gの有力候補には挙がっておらず、初めて「ミリ波で5Gを実現しましょう」と訴えたプロジェクトです。

ミリ波を採用することで1000倍という圧倒的なパフォーマンス向上を実現できることを理論的に証明したところ、インテルやファーウェイ、サムスンなど賛同してくれる機関が海外から現れ、「これはいけるから、まず国連に持って行こう」とサジェスチョンしてくれました。それで一緒に推進し、WRC-15(2015年世界無線通信会議)で、セルラーにミリ波を使うことがITU-R(国連の無線通信部門)で初めて承認されます。これが、私が行った一番大きな貢献だと思います。そしてWRC-19で5Gの周波数が正式決定して今に至るというのが、ミリ波5Gの歴史です。
続きのページは「business network.jp」の会員の方のみに閲覧していただけます。ぜひ無料登録してご覧ください。また、すでに会員登録されている方はログインしてください。

著者プロフィール

阪口啓(さかぐち・けい)氏

1973年11月生まれ。2008年4月に東京工業大学大学院 理工学研究科 准教授、2012年4月に大阪大学大学院 工学研究科 准教授、2015年4月に東京工業大学 大学院 理工学研究科 准教授、2015年8月にフラウンホーファー・ハインリッヒ・ヘルツ通信技術研究所 研究主幹を経て、2017年4月に東京工業大学工学院 教授に就任(現任)。超スマート社会卓越教育院 教育院長、超スマート社会推進コンソーシアム コーディネーターなども務める。博士(学術)
  • Teitter
  • facebook
  • 印刷

スペシャルトピックスPR

nttcom2202
qnap2202
softbank2202

>> 今月の月刊テレコミュニケーション

月刊テレコミュニケーション【特集】6Gと未来

<Part1> 6G最新動向 <Part2> 6Gと知財・標準化
<Part3> 6Gとエネルギー問題 <Part4> 通信事業者のメタバース
<Part5> 6G時代のサイバー攻撃


インタビュー国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) 未来ICT研究所長 和田尚也氏「量子ICTやバイオICTなど従来と全く違う発想で未来拓く」 【ソリューション特集】ミリ波の弱点を克服/5G時代を支える光ソリューション ほか

>>詳しい目次を見る

スペシャルトピックス

ローデ・シュワルツ強みのミリ波技術で6G開発に貢献 1THz対応受信器もラインナップに
ローデ・シュワルツが得意のミリ波技術で6Gへの取組を強めている。

モバイル空間統計が直面した困難「ビッグデータのプライバシーを守れ」<連載>NTTグループのプロフェッショナルたち
モバイル空間統計が直面した困難「ビッグデータのプライバシーを守れ」
NTT Comサイバー攻撃事件の舞台裏「侵入者は対策メンバーのアカウントにもなりすましていた」<サイバーセキュリティ戦記>
NTT Comサイバー攻撃事件の舞台裏

「侵入者は対策メンバーのアカウントにもなりすましていた」
セイコーソリューションズ近づくISDN終了 ワンストップの移行サービスが登場

ハードウェアを設置するだけ!ISDNからIP網への移行をフルサポート。

AirREAL-VOICE2簡単操作でマイグレーション実現
データ通信だけでなく通話・FAXも

アダプターの入替だけで移行が完了するMIの音声対応LTEルーター

NTTデータINSネットの後継ならお任せ!
移行で伝送時間短縮や負荷軽減

INSネットからの失敗しない移行方法をEB/FBの種類別に紹介しよう。

Wi-SUN AllianceWi-SUN認証デバイスが1億台突破
日本発の世界標準規格の普及加速

2.4Mbpsへの高速化など新たな進化も始まっている。

エヌビディアNTTとLINEが牽引する日本の自然言語処理、この2社がリーダーである理由

3月21日から開催の「NVIDIA GTC 2022 Spring」で知ろう!

IoT用のSIMはきめ細かに管理する!
閉域網、帯域確保で安定・安全通信

スマホでおなじみの「mineo」が、IoTでも利用を拡大している。

NEEDLEWORK(ニードルワーク)ネットワークテストの負担から
SIerを解放する自動化製品!

200時間の作業が数10秒の例も!
テストの品質向上にもお勧めだ。

フォーティネット5G特有の脅威に備え、セキュアで柔軟なローカル5G・プライベート5G

ローカル5G・プライベート5Gではセキュリティリスクへの対処も必要だ。

Alkira4か月かかるクラウド接続を1日で!

DX時代に欠かせないマルチクラウドネットワークの一元管理が、Alkiraなら内製でも容易に実現可能

IoT Connect Mobile Type S柔軟なIoT回線で閉域にも大容量にも
IoTの「分からない」を一緒に解決

ユーザーの要望に合わせて柔軟にプランを選択できる!

ホワイトペーパー

アクセスランキング

tc202012

「通信」の力でビジネスを進化させるbusinessnetwork.jp

Copyright(c) 2020 RIC TELECOM Co.,Ltd. All Rights Reserved. 記事の無断転載を禁じます
当ウェブサイトはCookieを使用しています。閲覧を続ける場合、プライバシーポリシーに同意したことになります。