日本中を400Gbpsの超高速回線でつなぎ、海外とも100Gbps超で接続。各種のクラウドと閉域接続が可能で、エッジにはNFV(ネットワーク機能仮想化)を実装。さらに5Gと連携し、ローカル5Gもサポートする――。
最新技術がてんこ盛りの全国ネットワークが来年誕生する。2022年4月に運用開始する“次期SINET”だ。
SINETは、日本全国の大学・研究機関等の学術情報基盤として国立情報学研究所(NII)が運用する広域ネットワークだ。高エネルギー研究や核融合、地震観測・津波予測といった先端研究において、国内外の学術機関同士の連携、大規模研究施設やスパコンの共同利用などを下支えしているほか、医療や遠隔教育等の基盤としても使われている。
現在は、2016年4月に運用を始めたSINET5を964機関(2020年末時点)が利用している。全都道府県にSINET DC(データセンター)を設置し、その間を100Gbps回線で接続、欧米・アジアとも100Gbpsの国際回線でつなげている。2018年12月には、3G/4G通信が使えるモバイルSINETも開始。2019年12月には、特にトラフィック量が多い東京−大阪間を400Gbpsに増強した。
全国をフラットな400G網にこれを発展させたSINET6の構築が進んでいる。NII副所長の漆谷重雄氏は方向性として次の5つを挙げる。
第1は「世界最高水準の400Gbpsを全国展開する」ことだ(図表1)。
図表1 次期ネットワークのイメージ①
スパコン/大型実験設備の利用や、国内外の学術・研究機関が連携する共同研究の進展等により、帯域ニーズは急速に拡大している。SINET6の運用が終了する2027年度には、多くの区間で800Gbpsクラスの帯域が必要とされる可能性も十分にあるという。
現状でも、例えば理化学研究所や大学等のスパコンから出力されるデータのバックアップ時には、「神戸と柏(千葉県)の東大との間で90Gbpsの通信が6時間以上続く」。国内外の大学が参加する高エネルギー加速器研究機構のBelleⅡ実験でも、「米国へ定期的に数十ギガのトラフィックが流れる」。無圧縮8K映像を用いる場合にも25~50Gbpsの帯域が必要だ。
市場には800Gbps伝送が可能な製品も登場しているが、まだ伝送距離が短いため、まずは安定的かつ経済的な長距離伝送が可能な400Gbpsで全国網を構築する(沖縄海底ケーブルは400Gbpsの適用が困難なため、当面100Gbps)。運用開始後に、技術・製品の成熟度を見ながら800Gbpsへの増強を検討する。