<特集>オフィスのNew NormalIoT活用で「3密」を回避 コロナに打ち克つオフィス創り

多くの人が集まるオフィスは、新型コロナウイルスの感染拡大の温床となりかねない。混雑度検知やCO2測定、タッチレス化など、IoTを活用した安心して働けるオフィス創りが不可欠だ。

社内外から多くの人が集まるオフィスは「3密」(密閉・密集・密接)状態になりやすく、ともすれば感染拡大の温床となりかねない。3密を回避するため、政府は経済界に対し、従業員の在宅勤務率の引き上げを要請している。

しかし、個人情報を扱う業務など、オフィスに出社しなければできない仕事もある。生産性などへの懸念から、そもそもテレワークに前向きではない企業も少なくない。続々と人が戻ってきているオフィスも増えているなか、従業員や取引先の安全安心をどう守ればいいのか。今、IoTがコロナ対策としてオフィスで活躍し始めている。

非接触で発熱の人をふるい分けオフィスでの感染拡大を防ぐ第一歩は、感染の疑いのある人をできるだけビル内に立ち入らせないことだ。

その方法の1つとして、入館ゲートや受付で従業員や来訪者1人ひとりに対する検温の実施がある。しかし、警備員や受付スタッフなどにとっては、大きな負荷がかかるだけではなく、多数の人と接触することになるため感染リスクも高まる。

そこで新型コロナウイルスの感染の広がりとともに、体表温度を測定するICTソリューションが多くの企業から提供されている。

非接触で検温するのに適しているのがサーマルカメラだ。サーマルカメラが映し出す映像(サーモグラフィ)は、温度が高い部分は赤く、低い部分は青く表示されるので、体温が高いと赤い部分が大きくなる。発熱の疑いのある人をスクリーニング(ふるい分け)する作業の自動化により、管理者の負荷を軽減することができる。

ただ、サーマルカメラは身体表面の温度を測定する機器であり、体温を計測するものではない。一般的に体表温度は体温より約1~2度低く測定されるが、測定時あるいは測定前の環境の影響を受けやすい。例えば炎天下を歩いてきた後などは、直射日光にさらされた黒髪の熱さに反応し、高めに計測される傾向がある。

こうした課題を解決するのが、ソフトバンク子会社JCVのAI温度検知ソリューション「SenseThunder」だ。

画像認識技術を用いて人間の額の位置を特定。額の複数点を測定し、その中で一番高い温度を体表温度とする。この体表温度と体温、室温の3種類のビッグデータでディープラーニングしたAIアルゴリズムを用いて周囲の環境の影響などを勘案し体温を推定するが、脇の下の体温との誤差は±0.3度とほぼ正確に測定できるという。

「混雑時など複数人を同時に測定するようなケースでは、設定値を超えているのが誰なのか判別できなくなる可能性がある」とNEC デジタルプラットフォーム事業部 マネージャーの薄井佑介氏は指摘するように、サーモグラフィだけでは発熱している人が“すり抜け”てしまう可能性もある。

NEC デジタルプラットフォーム事業部 マネージャー 薄井佑介氏
NEC デジタルプラットフォーム事業部 マネージャー 薄井佑介氏



そこでNECが8月に提供を開始した「感染症対策ソリューション」は、サーマルカメラによる体表温測定と同時に、可視光カメラによる顔認証を実施する。設定値を上回る体表温度の人物が検知された場合、顔情報と合わせて管理者に通知し、対象者に検温を促すことができる。

体表温測定を顔認証と組み合わせることで、設定値以上の人物を社員データベースや入館手続きの情報と紐付けて効率的に検出するとともに、館内への連絡をスムーズに行える。また、自動化により警備員などが常駐する必要がなくなるため、省人化にもつながるという。

感染症対策ソリューションは、可視光・サーマル一体型カメラにより顔認証と体表温測定をオンプレミスで実施する「ベーシックモデル」と、可視光カメラで顔検出、サーマルカメラで体表温を測定し、クラウド上で顔認証を行う「クラウドモデル」を提供する。

入場ゲートが複数ある大規模ビルや、本社以外に複数の拠点に支社や支店のある大企業などは、ゲートごとや拠点ごとにサーバーを持たなくてもクラウド上のサーバーでまとめて顔認証を行えるクラウドモデルが適するという。

月刊テレコミュニケーション2020年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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