企業ネットワーク最前線

MaaSで支える高齢社会 MONETと自治体の挑戦

文◎松本一郎(編集部) 2019.11.06

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MONET Technologies 事業推進部長
上村実氏

日本にMaaSが「実装」され始めた。交通弱者の「足」になるほか、医療分野などでサービスも生まれている。ソフトバンク×トヨタの「MONET」の取り組みから自治体のMaaS活用の事例を紹介する。

 
トヨタ自動車やソフトバンクなどの共同出資会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ、以下MONET)」が、MaaS(Mobility as a Service)を推進することを目的に、続々と企業や自治体と手を組んでいる。

MaaSとは、車や飛行機などの移動手段や、決済などの各種サービスを統合し、1つのシームレスなサービスとして提供することを指す。

MONETは2019年3月、MaaSの企業間連携のため「MONETコンソーシアム」を設立した。参加企業は当初88社だったが、8月末時点では355社にものぼる。自治体とも連携をすすめ、現在は22の市町村と連携協定や覚書を結んでいるほか、300以上の自治体と話をしているという。

MaaSで最も期待されているのが自動運転だろう。一方で「自動運転が実現してもそれは移動するだけ。それによって何ができるようになるかが一番の課題だ」とMONET Technologies事業推進部長の上村実氏は指摘する。

そこで、MONETは自治体などと協力して様々なサービスの社会実装に取り組んでいる(図表1)。

 

図表1 地方自治体との連携イメージ
図表1 地方自治体との連携イメージ


上村氏は「国も2025年までに自動運転車両の実用化を目指している。我々もそれに合わせ、様々なサービスを車に乗せられるようにしたい。そのためにまずは有人車両を利用したオンデマンドモビリティサービスなどから始めている」と目標を説明した。

高齢化率49%!若葉台の取り組み「一番の問題は高齢化だ」。日本の移動に関する課題について、このように上村氏は指摘する。

高齢者が増えるにつれ、移動困難者も増えている。近年は高齢者による交通事故が社会問題化していることもあり、免許を自主返納する高齢者が増加。自治体も、免許返納者にレストランや百貨店、美術館の割引などの特典を充実させるなど、この流れを加速させている。

他方で日本バス協会の調査によると、地方ではバス運営会社の83%は赤字で経営されている。こうした苦しい実情から、路線の縮小・廃止なども起きている。これらの背景が積み重なり、平成27年の国勢調査では65歳以上の買い物困難者は820万人いると推計されている。

移動が困難になると、生活が激変する恐れがある。

「外出する機会が減り、コミュニケーションをとる機会も減る。病気になっても周囲が気づけず病状が悪化してしまう」と上村氏は懸念する。また、高齢者をサポートする働き手の負担増も無視できない。移動困難者が増え続ける現状を放置するのは「悪循環しかない」(上村氏)。

自力での移動が困難な住民の移動を支えるMaaSが求められている中で、MONETは高齢者割合が49.4%にのぼる横浜市旭区若葉台で実証実験を開始した(図表2)。

 

図表2 横浜市若葉台で行われた実証実験の概要
図表2 横浜市若葉台で行われた実証実験の概要


実証では、MONETが開発した配車プラットフォームを活用して、相乗り可能なオンデマンドバスを地域で運行。アプリで乗降場所や日時などを指定して予約すると、利用者の自宅付近から病院前の停留所などの間を送迎してくれる。車内空間にはチャイルドシートも整備し、高齢者に限らず子育て世代にとっても移動しやすい環境を提供する。

これらのサービス創出を支えているのが、MONETが収集しているIoTデータだ。車両の位置情報や乗降場所、日時、乗客数などのデータを分析し、最適なルートをドライバーに提示する。

こうしたデータはサービスの効率化にも役に立つ。実証期間中にオンデマンドバスの停留所の利用状況をモニタリングしたところ、なんと63カ所のうち、半分の31カ所が1度も使われていなかったという。

「停留所を設置した時の交通計画が最新の状況にそぐわない場合もある。バスに何人の乗客がいて、いつ・どこを走っているかといったデータを取得して定量化することで、サービスの運用を効率化できる」と上村氏は話す。

また、横浜市とMONETは2019年7月から8月にかけて、若葉台エリアの内外にある大型病院や保育園、商業施設を結ぶシャトルバスの運行を開始した。アンケートでは「外出機会が増えそう」という声も寄せられ、単なる移動弱者の救済だけでなく住民の健康増進の効果も期待できることが示されたという(図表3)。

 

図表3 横浜市と若葉台のMaaS展開プラン
図表3 横浜市と若葉台のMaaS展開プラン

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