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[特集]IoT無線を自営する

<EnOcean>電池不要の自営IoT! 工場や介護施設などで採用続々

文◎藤井宏治(IT通信ジャーナリスト) 2018.03.12

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電池不要のIoT無線「EnOcean」の導入が日本でも本格化してきた。主要ユースケースである照明制御/ビルオートメーションに加え、高齢化を反映し、介護・見守り分野での利用も急速に伸びている。


「日本でもEnOceanが立ち上がってきた。市場規模はすでに米国の半分程度にまでなっている」――。こう語るのは、独エンオーシャン社のセールスディレクターとして日本を担当する板垣一美氏だ。


EnOceanは、同社が推進する短距離無線技術。光パネルや感圧素子などから得られる微細な電力を効率よく利用し、電池レスで運用できる点が特徴だ。欧州を中心に照明・空調制御などの用途で広く利用されている。住環境の違いなどから日本では普及が遅れていたが、ここ1~2年で導入が急速に広がってきたというのである。

では、EnOceanは実際どのような形で利用されているのか。ここでは、まずEnOceanの主要なユースケースの1つである照明制御/ビルオートメーションの事例を通して、EnOceanの特性を押さえたうえで、日本ではどんな分野で採用が進んでいるかを見ていく。

スイッチ周りの配線を追放東京都港区に本社を置くサカエは、半導体製造装置などのヒーター機器、糖尿病検査用分析装置などの医用・科学機器、世界最先端のシュレッダーなどの事務機器の3事業を柱とするメーカーだ。

同社は昨年6月、それまで分散していた事務機器と医用・科学機器の生産ラインを集約するため、群馬県藤岡市に新たに東平井工場を開設。新工場に、EnOceanを活用した照明制御システムを採用した。EnOceanを用いた国内の照明制御システムとしては比較的規模の大きな事例である。

2017年6月に稼働したサカエ新工場。事務機器、医用・科学機器の生産ラインと研究部門が集約された
2017年6月に稼働したサカエ新工場。事務機器、
医用・科学機器の生産ラインと研究部門が集約された



導入した照明制御システムでは、生産ラインや事務所がある工場の1階フロア全体のLED照明を、32個のEnOcean対応の無線スイッチで部屋やエリアごとにオン/オフできる。スイッチと照明制御用のコントローラー間は無線でつながるので、スイッチ周りの電気配線が不要なのが特徴だ。

また、このEnOcean対応の無線スイッチは、内蔵する電磁誘導発電素子によって、スイッチを押す動きを電気に変えて通信するため、電池交換の必要なしに、有線のスイッチと同様の運用性を得られる。

EnOcean対応の無線スイッチ。持ち運び可能であるため、青いテープで定位置管理を行っている
EnOcean対応の無線スイッチ。持ち運び可能であるため、
青いテープで定位置管理を行っている



医用・科学機器事業部長で、東平井工場長を兼務する浅見茂夫氏は、導入の狙いをこう説明する。

「4年前の大雪で工場の屋根がたわみ、部屋や生産ラインを仕切るパーティションに組み込まれた配線が切れ、危険な状況になったことがあった。そこでパーティション内の電気配線は避けたいと考えた」

この要望に対し、ビルオートメーション事業に注力する内田洋行が、EnOceanの無線スイッチを提案し、導入に至ったという。

サカエが特に高く評価しているのは、スイッチの位置を自由に変更できる点だ。

新工場の設備構築を担当した猪野美和氏は、「製造現場では頻繁にレイアウト変更を行うため、変更後、それまでのスイッチの場所では使い勝手が悪くなることがある。無線スイッチの場合、電気工事会社を呼ばなくても、すぐに位置を変えられるのでありがたい」と語る。

(左から)サカエ 医用・科学機器事業部 事業部長兼東平井工場工場長の浅見茂夫氏とヒーター機器事業部の猪野美和氏
(左から)サカエ 医用・科学機器事業部 事業部長兼東平井工場工場長の浅見茂夫氏と
ヒーター機器事業部の猪野美和氏




もう1つ評価が高いのが、各エリアの照明の点灯状況をiPadで確認し、遠隔制御できる機能だ。採用した照明制御システムと接続しているLOYTEC製コントローラーで実現している機能で、iPadとコントローラー間はWi-Fiで通信。複数拠点の遠隔制御にも利用できる。

サカエでは、制御用iPadを従業員出入り口と工場内の2カ所に設置し、最終退出者による電灯の消し忘れの確認などに活用している。

従業員出入り口に設置されている照明制御用のiPad
従業員出入り口に設置されている照明制御用のiPad



EnOceanのネットワーク設計にあたって、内田洋行では余裕を持たせた設計を心掛けたという。照明に障害が起きれば、生産に影響が及びかねないからだ。

「EnOceanは30m届くとされるが、工場にはノイズの発生源が多く、防火シャッターを下ろすと減衰も大きくなる。そこで今回は到達距離を15mで計算。4カ所にリピーターを配置し、2カ所の受信ユニットで確実に電波を捉えられるようにした」(内田洋行 営業本部業統括グループ スマートビル事業推進部 事業推進課 谷澤直人氏)

「実際に稼働するまでは、照明制御を無線化することへの不安もあった」と浅見氏は打ち明けるが、これまで問題は起きていないという。
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