<特集>SDN&NFV導入後のリアル:通信事業者編ドコモの携帯網は「NFV」でどう変わったか?

世界中の通信事業者で導入が進むNFV。その効果はどの程度発揮され、またどんな課題が出てきているのか。世界で初めてマルチベンダーによる仮想LTEパケット交換機(vEPC)を商用稼働したドコモの事例をみてみよう。

ネットワークインフラの構築・運用を劇的に変える技術として注目されるNFV。設備構築・運用コストを削減できる、新たなサービスを迅速に展開できるといった、様々な効果が期待されているが、その効果はどの程度なのか不透明な部分は多い。

汎用ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで従来設備と同等の機能や性能、信頼性が確保できるのか、運用上のデメリットはないのかといった懸念もある。

では、すでにNFVを運用しているNTTドコモはどのような効果を認めているのか。実運用で見えてきた課題も含めて、現時点でのNFVに対する評価を聞いた。

NTTドコモ
(左から)コアネットワーク部 コアノード計画担当部長の土屋宗紀氏、R&Dイノベーション本部 ネットワーク開発部 トランスポート基盤担当 担当部長の内山靖之氏、ネットワーク開発部 ネットワーク仮想化基盤担当 担当部長の音洋行氏

従来型とvEPCに「差はない」ドコモは今年3月、EPC(Evolved Packet Core:LTEパケットコア交換機)をNFVによって仮想化した「vEPC」の商用運用を開始した。

EPCは、S-GWやP-GW、MMEといった各種システムで構成されるもので、従来はシステムごとに専用装置が使われてきた。NFVは、これらS/P-GWやMME等の機能を持つソフトウェアを、汎用ハードウェア(IAサーバー等)で構成した仮想化基盤上で動作させるものだ。

ドコモのLTE網内では現在、専用装置型のEPCとvEPCが併存している。ネットワーク開発部・ネットワーク仮想化基盤担当・担当部長の音洋行氏によれば、vEPCも、加入者にLTEサービスを提供するためのインフラの一部として「既存設備と同じように使っている」。先に挙げたような懸念は当たらず「既存設備と同じ機能を持つアプリケーションを使っており、差はない」という。

ドコモは今後、LTE網の容量拡大はすべてvEPCで行い、保守サポート切れ(EoL)を迎えた既存設備もvEPCで更新していく。また、EPC以外の設備にもNFVを適用し、将来的にはネットワーク全体で仮想化のメリットを発揮できるようにする計画だ。17年度以降に、仮想IMS(IP Multimedia Subsystem)も商用稼働する予定である。

現時点ではインフラ全体に占めるvEPCの割合はまだ小さいものだ。ただし「だからといって仮想化のメリットが小さいわけではない」と話すのは、コアネットワーク部・コアノード計画担当部長の土屋宗紀氏だ。

例えば、NFVのメリットの1つである「オートスケーリング」について言えば、EPCの一部分が仮想化されていればその効果は得られる。オートスケーリングとは、トラフィックが急激に増えて容量が不足した場合に、自動的にリソースを増やして輻輳が発生するのを防ぐという使い方のことだが、vEPCの容量が増加すれば、従来設備を含めたEPC全体の容量が増え、輻輳が起きにくくなる。

なお、土屋氏は「仮想化の効果が高いと判断すれば、EoLを待つことなく既存設備をvEPCに更新していくことも十分にあり得る」と話す。

月刊テレコミュニケーション2016年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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