スマートフォンを使う人の大半が、家ではWi-Fi、外では4G/5Gと使い分けている。便利ではあるが、その理由は“ギガを節約したい”“4Gだと動画がカクカクする”など後ろ向きのものが多いのではないだろうか。
また、Wi-Fiの基盤であるFTTHやCATVサービスと4G/5Gサービスは異なる通信インフラで提供されているため、認証方式も通信品質も、契約も料金形態も異なる。
家では電話機やPC、外では携帯電話と、固定通信サービスと携帯電話サービスで端末・アプリケーションが異なっていた時代ならいざしらず、今は誰もが、どこでもスマートフォンで同じアプリを使っている。なのに、なぜネットワークは同じにならないのか──。通信に詳しくない人ほど、その不便さに疑問を持つことも多いはずだ。
5Gはコンバージェンスの好機携帯電話サービスの誕生以来、世界中のほぼすべての通信事業者が固定通信ネットワークとモバイルネットワークを別々に構築・運用してきた(図表1の左)。
この“当たり前”が、ついに終わりを迎える。標準化団体で、2つのネットワークを融合する「5G WWC(Wireline-Wireless Convergence)」仕様の策定が進んでいるからだ。図表1の右側のように、FTTH等の固定アクセス網を5Gコア(5GC)に収容するかたちでの融合を目指す。
図表1 固定・移動ネットワークの現状と5G WWCのイメージ(画像をクリックで拡大)
かつて3G時代にも「FMC(Fixed Mobile Convergence)」が注目を集めた。日本でも固定電話と携帯電話の連携サービスが実現したが、それはあくまでアプリケーションレベルの話で、2種類の電話料金をバンドルしたに過ぎなかった。
また、3GPPは2010年代にも固定・移動網を融合するFMC仕様を作成していたが、これも実用化されることはなかった。
では、5G WWC、つまり「5G時代のFMC」はどうか。
エリクソン・ジャパン 最高技術責任者(CTO)の藤岡雅宣氏、ノキアソリューションズ&ネットワークス CTOの柳橋達也氏はともに、同じ轍を踏むことはないと見る。
「5Gは、ちょうどよいコンバージェンスの機会と考えられており、通信事業者にとって多くのメリットがある」と藤岡氏。柳橋氏も「固定・移動の双方の事業者にモチベーションがあり、両方のアセットを持つ事業者にとっては間違いなく魅力的なソリューションだ」と話す。