ソフトバンクは、2010年4月27日に開催した2010年3月期決算説明会で、2010年度の設備投資額を前年度比約1800億円増で、過去最高の4000億円とすることを明らかにした。2009年3月期決算で表明した有利子負債の償却が完了する2014年まで「大規模な設備投資を行わない」とする方針から一転、「攻め」の姿勢に変じた形だ。
設備投資の中心となるのは携帯電話基地局の整備で、2010年3月末現在約6万の基地局数を2011年度3月末までに倍の12万(屋内基地局を含む)とする。これに併せてフェムトセルやWi-Fiなどを展開することで、モバイルブロードバンド時代を見据えた大容量インフラを実現する。
ソフトバンクが積極策に転じた大きな要因の1つは、前2009年度の好調な業績にある。売上高は対前度比103%の2兆7634億円と微増だが、営業利益が同130%、過去最高の4658億円となった。この営業利益は「国内の企業の中でNTT、NTTドコモに次ぐ3位となる見込み」だという。
ソフトバンクは携帯3社の中で唯一増収増益となった |
営業利益の伸びを牽引したのが2609億円(対前年152%)を稼ぎ出した移動通信事業だ。基本料金の安さでユーザーのベースを拡大、コンテンツの拡充をデータARPUの増大につなげるというビジネスモデルが奏功した形となった。孫正義社長は「世界の携帯電話事業者の中でも、ARPUが前年を上回ったのは当社だけか、あってもごく少数」と胸を張る。
こうした収益構造の改善により、純有利子負債を2014年度までにゼロとする当初目標を変更せずに、設備投資を増額できるメドがたったという。
今回、発表された基地局整備プランは、3月末に同社が明らかにした「電波改善宣言」の具体策となるものだ。
投資の主体となるのが、2009年6月にソフトバンクが「再割り当て」を受けた1.5GHz帯のエリア整備。旧PDC基地局のアンテナやロケーション設備をそのまま置き換えることで低コスト、かつスピーディにエリアを拡大する。さらに、ソフトバンクが支援を表明したウィルコムのインフラを活用し、16万局のPHS基地局のうち「いいところを選りすぐって」携帯電話に転用、あるいはPHSと共同利用することで、基地局ロケーションの確保が難しい都心部で高密度インフラを一気に整備する。ウィルコム破綻がソフトバンクに「天から雨が降ってきた」(孫社長)といえる状況をもたらしたのだ。
Twitterに寄せられた要望を見てエリア改善を決断したと述べる孫正義社長 |
さらに、同社はこの1.5GHz帯の3Gインフラを高度化し下り42Mbpsのデータ通信を可能にするDC-HSDPAを2010年度4Qに導入するが、端末調達の問題から「サービスは数カ月後になる」見通し。これに商業施設や住宅などでのフェムトセル、Wi-Fiを併せて展開することで、「向こう5年間で40倍」と見るデータトラフィックの延びに備える。なお、2010年度中に基地局ハードウェアの整備が進むことから孫社長は、設備投資は同年度の4000億円でピークアウトするという見通しを示した。
このほか、質疑応答で孫社長が(1)NTTに対して同社が現在ADSLサービスに利用しているメタル回線を全廃し光アクセスへの一本化を促したことや、(2)同社が早期利用求めている700/900MHz帯の利用開始の遅れにつながる海外のバンドプランとのハーモナイズを支持するとしたことは、同社の長期戦略との関係から注目されよう。
ソフトバンクではTwitterや動画配信のユーストリームなどをモバイルブロードバンド時代の有望なアプリケーションと見る。決算会見の模様もユーストリームを通じてリアルタイムで公開され、視聴者から多くの「つぶやき」が寄せられた |