日本経済新聞は2010年4月27日朝刊で、ウィルコムから引き継ぐXGP(次世代PHS)事業において、ソフトバンクが中国移動(チャイナモバイル)の推進する「TD-LTE」を採用する方針を固めたと報じた。
TD-LTEは、3.9世代の移動通信方式であるLTEのTDD(時分割複信)版。送信用と受信用の2つの周波数帯域を用いるFDD(周波数分割複信)とは違い、1つの周波数帯域で送受信の両方を行う。ウィルコムはソフトバンク等が出資する新会社にXGP事業を譲渡するが、XGP用に総務省から割り当てられた2.5GHz帯はTDD用の周波数帯域である。
TDDのモバイルブロードバンド規格としては、TD-LTE、XGPの他にWiMAXがある。この3規格はいずれも無線アクセス技術にOFDMA(直交周波数分割多元接続)を採用するなど、技術的には非常に似通っており、既存PHSと共存するための仕様を加えたのがXGPという言い方もできなくはない。
ただ、大きく違ってくる可能性があるのが、基地局や端末などの調達コストだ。これらの調達コストは基本的にマーケットボリュームにより決まるが、XGPはウィルコムだけが採用する日本独自方式である。一方、WiMAXはすでに世界で多くの事業者が導入。また、TD-LTEは5億ユーザーを抱えるチャイナモバイルのほか、インドでも導入が計画されている。
FDDのモバイルブロードバンド規格は事実上LTEに統一されることになったが、ソフトバンクがTD-LTEの導入を決めたとすると、WiMAXの牙城であるTDD用周波数帯域においてもLTE採用の動きが今後いっそう広がりそうだ。