2009年はまさにMVNO参入ラッシュの1年だった。MVNO活性化に向けた総務省の取り組みが2009年、日本通信とNTTドコモのレイヤ2相互接続の完了、MVNOへの回線提供を前提とするUQコミュニケーションズのサービス開始などの形で結実し、参入が相次いだのだ。
ただこの参入ラッシュも、WiMAXの商用サービス開始時にISPや家電量販店など約10社が一挙に参入したのをピークに一段落。今はMVNO参入の第一波が終わり、小康期に入ったところにある。
では今後、第二波はやってくるのか。そのために重要なのは参入ハードルのさらなる低下だが、それを望んでいた企業にとって興味深いサービスが2010年6月から始まる。2002年参入と“MVNOの草分け”である京セラコミュニケーションシステム(KCCS)のMVNO支援サービスだ。
異業種の参入を手助け
MVNOは大きく2つのタイプに分けられる。1つは「回線卸売り型」で、これは料金体系などにMVNO各社の工夫が施されている例も多いが、基本的にはMNO(移動体通信キャリア)と同等のサービスを提供するタイプだ。従来から通信関連の事業を展開していたISPやSIerが手がけるケースが多い。
もう1つは「高付加価値型」である。これは主に通信関連以外の異業種企業が、自社の強みとモバイル通信を組み合わせて新しいサービスを実現するタイプだ。その最大の成功例の1つには、米アマゾンのKindleが挙げられる。Kindleでは3G通信機能を使い、いつでもどこでも欲しい電子書籍を入手できる。
回線卸売り型を検討する中小規模のISPやSIerなどへも支援サービスは提供していくが、KCCSがメインターゲットとするのは、高付加価値型のほうだという。「いろいろな業種の方をお手伝いすることで、高付加価値型MVNOをインキュベートし、大げさな言い方になるが通信市場の活性化に貢献していきたい」と同社ICT事業統括本部ネットワーク事業推進室の森丈志室長は語る。
現在参入済みのMVNOの多くは回線卸売り型に分類できる。その理由の1つはあまり大きな投資が要らないからである。既存の設備や人材を活かせるISPやSIerは特にそうだ。
一方、高付加価値型MVNOを目指す異業種企業の場合、通信関連事業を従来手がけていないのだから、参入に際してシステムと人材の両面で新しいリソースが必要になるだろう。さらに、単純なインターネット接続サービスを提供するのと比べて、そもそも必要な準備も多い。どうしてもハードルは高くなる。そこで、そうした異業種企業でも容易にMVNO事業を行えるよう支援するのがKCCSのサービスの役割である。