長時間労働が疑われる1万超の事業場に対して厚生労働省が2016年度上期に行った調査では、43.9%の事業場で違法な時間外労働が確認されたという。そのうち「過労死ライン」とされる月80時間超の残業が認められた事業場は78.1%にも上った。
また「過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導した」事業場は86.3%。「労働時間の把握方法が不適性なために指導した」ものは69.8%に及んでいる。社員に犠牲を強いる経営がはびこっていることを示す数字だ。
IoTで「現場の実態」を把握社員の健康と安全を守ることは経営者の責務であるとともに、人材の有効活用と労働生産性の向上にもつながる。「ニッポン一億総活躍プラン」においても長時間労働の是正が「働き方改革」に関する施策として盛り込まれており、各業界でも改善に向けた具体的な動きが出てきた。
3月11日には、春闘交渉中の電機業界大手の労使が協調して長時間労働是正に取り組むと発表。「長時間労働は企業の生産性や業績にも悪影響を及ぼす」との見解を明確に示した。また、日本経済新聞社が行った調査では、上場企業301社の7割超が長時間労働の是正を働き方改革の最優先課題に挙げているという。
いわゆる“ブラック職場”が社会問題化しているが、これを生み出す大きな要因は、違法な時間外労働と健康障害・事故である。危険性の高い業務におけるリスク対策が十分でないために健康を害したり、事故が発生するケースも後を絶たない。
これを解決するには、まず現場の実態を正確に把握することが不可欠だ。主観や作為が入り込まない正確なデータで状態を可視化することが鍵になる。
IoTはその助けとなる。