今すぐ使えるIoT向けLTE「カテゴリー1」を徹底解説

IoT向けの通信料金プランが出るなど、通信コストは下がってきたが、デバイスコストはまだ高い。そんな課題を解消し、IoTを大きく一歩前進させるLTE「カテゴリー1」が、いよいよ利用できるようになった。

IoT向けLTEの一番手「カテゴリー1」を搭載したIoTデバイスが、ついに登場した。

カテゴリー1対応のLTE版IoTゲートウェイだ。ネットワークインテグレーターのレンジャーシステムズが、2016年12月から評価用の端末レンタルを受付開始し、2017年1月から提供し始めた。

IoTで「カテゴリー1」に脚光カテゴリー1の「カテゴリー」とは、正確には「UE(User Equipment)カテゴリー」のこと。スマートフォンやモバイルWi-Fiルーターなど、LTEデバイスの技術仕様で、移動通信システムの標準化を行う3GPPが策定している。

LTEのカテゴリーには、カテゴリー1の他にもカテゴリー2、3、4、5があり、6以降はLTE-Advanced用だ。

例えば、カテゴリー3(iPhone 5/5sが対応)の通信性能は、2×2MIMOで最大通信速度は下り100Mbps/上り50Mbps、カテゴリー4(iPhone 6/6 Plusが対応)は2×2MIMOで最大通信速度は下り150Mbps/上り50Mbpsだ。

それに対して、カテゴリー1はMIMOはなく、最大通信速度は下り10Mbps/上り5Mbps。他のカテゴリーと比較すると1ケタも低速だ。2008年のRelease 8で定義されていたものの、高速化が追及されてきたこれまでのLTEにおいては、忘れ去られていた存在だった。

それが今、低速なカテゴリー1に大きな注目が集まる時代がやってきている。IoTの盛り上がりとともに、「通信速度はほどほどでいいから、膨大な数のセンサーやデバイスをとにかく安くネットワークにつなぎたい」という、これまでにはなかったニーズが出てきたためだ。

安さは通信速度とのトレードオフで実現される。MIMOがないカテゴリー1は、アンテナが少なく回路もシンプルな分、既存の他のカテゴリーと比較すると通信モジュールのコストを安くできる。カテゴリー1を採用すれば、デバイスコストを安く抑えられるのだ。

一方、通信コストはキャリアやMVNOの値付け次第だが、ほどほどの通信速度でいいデバイスのデータ通信量はたかが知れている。最大通信速度が遅い分、通常より安価に利用できる可能性もある。

通信モジュールの安さをウリの1つとするLTEベースのIoT向けネットワークとしては、LTE版のLPWAである「NB-IoT(カテゴリーNB1)」と「カテゴリーM1」もあるが、いずれも2016年に3GPPのRelease 13で標準化されたばかりだ。商用利用が実現されるのは、標準化されてから2年ほどはかかるのが一般的で、まだ日本ではNB-IoT/カテゴリーM1は商用フェーズにはない。

そうしたなか、今すぐ使えるIoT向けLTEとして、カテゴリー1をめぐる動きが活発化している。

月刊テレコミュニケーション2017年2月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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