インターネットイニシアティブ(IIJ)が開発した「PMS(Power Metering System)サービスプラットフォーム」は、スマートメーターとHEMS、BEMSなどをつなぐために整備された「Bルート」という通信経路を使って、検針データなどを宅内機器で直接取得し、インターネットを経由してクラウド上で一元的なデータ管理を可能にする仕組み。
同社では、1)スマートメーターの検針データを取得しクラウド側に送信するルータ機能搭載のサービスアダプタ「SA-W1」、2)検針データを蓄積・管理するクラウドシステム「PMS」、3)「SA-W1」をリモートで集中管理できるマネジメントシステム「SACM(Service Adaptor Control Manager)」と、宅内機器からクラウドサービスまですべてを提供する。
IIJブースに設けられた「PMSサービスプラットフォーム」の展示。サービスアダプタを介して収集した電力検針値をPC画面に表示していた |
「SA-W1」は、エコーネットコンソーシアムが策定したHEMS向けの標準規格「ECHONET Lite」に対応した機器の制御も可能。検針データをもとに省エネ対策となる空調機器の運転調整なども行える。
スマートメーターは全国各地の電力会社がアナログ式電力量計からの置き換えに着手しており、今後10年ほどで総計約8000万台が設置される見通し。また、Bルートの通信規格としてすべての電力会社がWi-SUNを採用することを決めている。
つまり、「PMSサービスプラットフォーム」は、今後導入が進むスマートメーターのすべてに適用可能なサービスというわけ。もちろん、具体的なサービス内容については電力事業者側のアイデア次第だが、「電気の使用量がリアルタイムに把握できるというだけで、さまざまな付加価値に結び付く。端的なアイデアとしては、ホームセキュリティや高齢者の見守りサービスに活用できる」と、展示ブースの説明員は話していた。
6月上旬からは、商用化に先駆けた実証実験環境の提供を開始する予定。電力小売事業への参入を計画している企業からは少なからぬオファーが寄せられ、準備も着実に進められているという。
導入のハードルを下げる”ゼロコンフィグ”のメリットも強調
開催初日(27日)に展示会場内で催されたコンファレンスでは、IIJ プロダクト本部基盤プロダクト開発部副部長の齋藤透氏が、「電力小売自由化で始まる新たなM2M/IoTビジネスの可能性」と題し、市場全体の今後の動向と合わせて、自社サービスの特徴も詳説した。
満席の聴講者に向けて講演するIIJ プロダクト本部基盤プロダクト開発部副部長の齋藤透氏 |
齋藤氏は、電力小売事業自由化の背景・経緯、スマートメーターの設置スケジュール、検針データ送信用の3つの経路(A/B/Cルート)の仕様等々、基礎的な知識について分かりやすく説明したうえで、「最終的に8000万台規模に達するスマートメーターというセンサーデバイスを、統一の通信規格で自由に利用できる仕組みがBルート」と述べ、「これを使わないのはもったいない」と強調した。その基本的な活用方法として、検針の自動化、電力の見える化、EMSとの連携による機器制御の3つを掲げた。
さらに、電力小売事業者の新たなビジネスモデルとして、
・住宅メーカーが一定年数の新築住宅を一定年数の電気代込みで販売する
・家電量販店が(空調・暖房機器など)商品と電気代をセットにして販売する
・出版社が”電気代”を雑誌の付録にする
など、ユニークなアイデアも紹介した。
「PMSサービスプラットフォーム」に関しては、機能面の特徴とともにデバイス・ネットワーク・クラウドをワンストップで提供できる強み、長年の法人向け事業で培った高品質・高信頼性をアピールした。
加えて、「SA-W1」「SACM」が導入してすぐに使える”ゼロコンフィグ”(自動接続・自動設定)であることも大きなメリットに掲げ、「裾野の広い市場への普及をスムーズに進めるためには、導入時の簡便さも非常に重要なポイント」と強調した。
齋藤氏は、電力小売自由化以降の需要動向やBルート活用促進の現実的な課題などについても言及した。その内容は、新たな市場の開拓にいち早く取り組んできた先行者ならではの見識やノウハウが感じられるものだった。