「ワイヤレスジャパン2015」初日の基調講演には、通信キャリアやMVNO事業者、通信ベンダーなど通信業界のリーダーが登壇した。
まず、NTTドコモ執行役員R&D戦略部部長の中村寛氏が「モバイルネットワークのエボリューション~ネットワーク仮想化とあくなき無線の発展」と題した講演を行った。
NTTドコモ執行役員R&D戦略部部長の中村寛氏 |
その中で中村氏は、2020年に向けた技術発展として、5GとNFV(ネットワークの仮想化)の取り組みを紹介した。
ドコモでは下り最大225MbpsのLTE-Advancedに対応した基地局を拡充しているが、スマートフォンの普及などによりデータトラフィックは今後も増加が続くことが見込まれる。さらに、ヘルスケアやITSなど用途の拡大などもあり、低遅延化や低コスト、省消費電力といった要件が求められる。
このため5Gでは、周波数の利用効率に加えて、高い周波数や高密度化などさまざまな技術の組み合わせが重要になるという。
また、NFVについて中村氏は「仮想化が先行しているITの世界ではコスト面のメリットが指摘されるが、テレコムの世界には別のメリットがあるのではないか」と指摘、具体的なメリットとして①通信混雑時のつながりやすさの向上、②通信サービスの信頼性向上、③サービスの早期提供、④ネットワーク設備の経済性向上の4つを挙げた。
今後の展開として、日本中のデータセンターをSDNでつなぎ、1つの巨大なNFVのシステムにまとめるという構想を披露した。例えば大規模災害時でも、その影響を受けていない地域のデータセンターを利用してサービスを提供することが可能という。
続いて登壇したインターネットイニシアティブ(IIJ)専務執行役員CTOネットワーク本部長の島上純一氏は「目指せ1500万契約!激動の中を突き進むMVNO」をテーマに講演した。
IIJ専務執行役員CTOネットワーク本部長の島上純一氏 |
SIMロック解除、格安スマホ、格安SIMといったキーワードからMVNOが注目を集めているが、現在の市場規模は約1375万で、このうち純粋なSIMカード型の回線数は約138万にとどまっている。とはいえ、MVNO事業者の増加やMNOの格安SIM参入などにより「レッドオーシャン状態」にあることから、島上氏は「横並びからの脱却や、格安SIM以外の道が必要」と述べた。
格安SIM以外の道としては、法人MVNOやM2Mへの活用があり、「そもそもMVNO=格安SIMではない」と島上氏は強調した。さらにIoT時代には、カーナビや見守りサービス、ウェアラブルなどへと用途の拡大が予想され、MVNOの参入も広がるという。
また、SIMロック解除の義務化、光回線卸の開始、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたSIM利用環境の整備などの動きがMVNOにとって追い風になると語り、講演を締めくくった。
インテル常務執行役員ビジネス・デベロップメントの平野浩介氏は、「NFVで変わるネットワークの未来~モバイルビジネスの成長を支えるインテルの取り組み」と題し、同社のNFV戦略を紹介。ノキアソリューションズ&ネットワークス・モバイルブロードバンドセキュリティ・プロダクトマネージメント部長のロドリゴ・ブリト氏は「スマートデバイスやIoTに対応したネットワークセキュリティ」をテーマに講演した。
華為技術日本・副社長兼マーケティング&ソリューションセールス本部長の周明成氏は、「これからの10年は5Gへのネットワークの進化が重要なポイントになる」と指摘。その上で、Massive MIMOをはじめとする5Gで重要な技術に対するビジョンを紹介した。
KDDI商品・CS統括本部プロダクト企画本部長の小林昌宏氏はauのプロダクト戦略を中心とする講演の中で、Firefox OSへの取り組みについて語った。
KDDIは昨年12月、Firefox OSを搭載したスマートフォン「Fx0」を発売した。Firefox OSはiOS、Androidに続く「第3のOS」として捉えられることが多いが、「WebベースのOSで高性能なスマホが作れるというだけでなく、Webアプリからセンサーやディスプレイを動かし、スマートフォンとしても動くことに意味があった」という。