Zabbix Japanは2025年8月18日、テレビ北海道と共同で、放送業界初となるMedia over IP(MoIP)制作システムの統合監視に関する実証実験を2025年3月より実施していることを発表した。
本実証実験はMoIP制作システムにおける統合監視手法の確立と、その実現性の検証を目的としたもの。MoIP制作システムに対する監視手法は、従来のSDI(Serial Digital Interface)ベースのシステムからIPベースのシステムへの移行によって生じる「監視レイヤーの変化」に対応する必要があり、具体的には、以下の変化に対応する。
・SDIルーターからメディア用ネットワークスイッチへの移行:ハイスピードインターフェース(25G/40G/100G)疎通状況確認の必要性
・物理接続から論理接続への移行:IPアドレス、IPマルチキャスト、RTPストリームといった論理的な接続状況の可視化の必要性
・Black BurstからPTPを用いた絶対時刻同期システムへの移行:PTP(Precision Time Protocol)の同期状態や、BMCA(Best Master Clock Algorithm)の状態の可視化の必要性
・すべての機器がネットワークスイッチに接続される構成:MoIPシステム全体を対象とした一元的な統合監視の必要性
これらの変化は、MoIPシステム全体を「面」として捉え、放送機材、ネットワークインフラ、センサー、クラウド環境などを包括的に一元監視する体制を構築することを意味しているという。
監視構成イメージ
実証実験では、ライブ制作系システムを構成する放送機器を直接監視するのではなく、各システム単位で監視しているアラーム監視装置との連携を主としている。Zabbixが各システムのアラーム監視装置と連携することで、効率的に監視を行い、また、各システムの状態変化レベルに合わせて各システム担当者に通知することで、各システムのアラーム監視装置単体の常時チェックも不要となる。
2025年5月22日には、本実証実験の中間報告をテレビ東京系列6局、および在札民放3局、協力企業(NEC、パナソニックコネクト、ネットワンシステムズ)に向けて実施し、総勢50名が参加、次世代監視モデルの意義と有効性を共有した。2026年1月末まで実証実験を継続する予定であり、テレビ北海道との協議を通じて、最終成果を踏まえた運用モデルの構築、さらには他局・全国展開への応用も視野に入れているという。