生成AIが通信事業に及ぼす影響
――生成AIが通信事業に及ぼす影響についてどう捉えていますか。
堀口 生成AIが労働に及ぼす影響度を業界別に調査したところ、業界平均の44%に対して、通信メディア業界は52%でした。相対的な影響度は高いと見ています。
解約予兆などの分野でプレディクティブ(予測)AIの活用は進んでいましたが、生成AIの登場で領域が広がります。注力領域は、顧客接点とネットワーク領域の2つ。どちらも多額のOPEX(運用コスト)を費やしている領域なので、生産性が上がれば通信事業を筋肉質にできるうえ、非通信事業への投資原資も創出できます。
アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部 コンサルティンググループ
通信・メディア プラクティス日本統括 堀口雄哉氏
山田 数千億円規模の投資がかかっているネットワークの領域は、AI活用の効果が非常に大きく、コンシューマー向けの売上が頭打ちのなか、ここは自動化したいはずです。
TM Forum※でも今、オートノマスネットワークがキーワードです。生成AIが出てきたことで、通信サービスのユーザーからの要求を理解し、対応についての意思決定も含めて自動化することで、ネットワーク運用を丸ごと自律化しようという試みが世界的に始まっています。
※TM Forum:情報通信ネットワークのオペレーション標準化団体。通信/IT業界の850社以上が加盟する
アクセンチュア ストラテジーグループ シニア・マネジャー 山田達也氏
瀧内 バックオフィス等も含むあらゆる業務領域で生成AIの活用が進むことは間違いありません。
さらに、ChatGPTのようなチャット形式に加えて、エージェント型AIの普及も進むと考えられます。チャット形式では人間が質問を設定し、AIが応答する“アシスタント”役ですが、エージェント型AIはより自律的に動き、私たちと“共に働く”形へと進化していきます。
例えばコンタクトセンターでは、一次応対はエージェントAIが担当し、より複雑な2次応対を人間が担当するといった運用が可能です。