ローカル5Gの海上利用が、間もなく解禁される。
総務省は2024年度内にも電波法令を見直し、制度を整備する方針だ。洋上風力発電や養殖場といった海上施設の点検・管理において、ドローンの空撮映像を無線伝送して分析することで作業を効率化するといった用途が期待されている。
ローカル5Gは陸上での利用を前提としていたが、かねてより、洋上風力発電や海底油ガス田などの海上プラットフォームでの利用ニーズがあり、海上利用を可能にする制度変更を望む声は少なくなかった。
そこで、総務省 情報通信審議会 情報通信技術分科会 新世代モバイル通信システム委員会「ローカル5G検討作業班」が2022 年から、共同利用(検討時は「広域利用」。2023年に制度化)等とともに、海上利用の技術的条件等を検討開始した。当時は結論に至らず継続課題とされたが、2024年春に検討が再開。隣接帯域との共用条件等の検証を経て、先般、2024年度内を目処に制度化することが発表された。
空撮ドローンで洋上点検・管理
まず、海上利用の制度を確認しておこう。
海上ローカル5Gは、Sub6のうち屋外で利用可能な4.8-4.9GHz帯を使う。利用可能な範囲は領海(12海里)内で、電波発射の形態には図表1の通り、陸上の基地局から海上へ電波を発射する、海上の構造物上に基地局を設置して電波を発射する、の2通りがある。
図表1 ローカル5G(4.7GHz帯)の海上利用
海上は原則として「他者土地相当」となるが、次の2つに該当するものは「自己土地相当」となる。
1つが、法令に基づいて特定の者が所有する海上構造物等。例えば、洋上風力発電の風車ブレードが海底に固定されている場合、これに当たる。もう1つは、法令に基づいて特定の者が占有する海上構造物で、海底にワイヤー等で係留されているもの。ブイのような形態で、それが移動しうる範囲を自己土地相当とする。
つまり、基地局を設置する構造物は海底に固定または係留されていなければならず、当然、船に基地局を積むことはできない。
海上ローカル5Gに最も期待されている用途が映像伝送だ。
洋上風力発電の風車ブレード等を空撮ドローンで撮影。その映像・画像を無線伝送して損傷や劣化を診断する。養殖場など他の施設にも応用できる。
現在は、監視員らが船で海上に出向いて目視で点検・確認する、あるいはドローンで撮影した映像を帰還後にSDカードで回収して分析する方法が採られる。前者の場合は手間とコストがかかるうえ、波が高いと船が出せない。
後者の場合も、映像回収のためだけに往復飛行するのは無駄であり、映像を確認した後によく見たい箇所があれば再度ドローンを飛ばさなければならない。映像を無線伝送してリアルタイム解析が可能になれば、大幅な作業効率アップとコスト削減が見込める。