無線LAN規格のIEEE802.11に、新規格「11bb」が加わった。
2023年7月に公開された11bbは、11ac(Wi-Fi 5)や11ax(Wi-Fi 6)とは大きく異なる。電波ではなく光を使う技術だ。紫外線・可視光・赤外線で無線通信する「LiFi」技術をベースとし、LEDを使って人の目にはわからないほど高速に光をオン/オフすることでデータを送信する。
LiFi機能は、一般的な照明にも搭載することが可能だ。上下ともに赤外線を使う、あるいは下り通信は照明の白色光を使い、端末からの上り通信には目に見えない赤外線を用いるといった組み合せも可能だ。標準規格の11bbでは、上下ともに赤外線(800~1000nm)を使用することとされている。
光だけど「ほとんどWi-Fi」
無線LAN規格として標準化されたことからもわかる通り、LiFiは、Wi-Fiと同様の用途を想定している。
アクセスポイント(AP)とPC/スマートフォンをつないでデータ転送やインターネット接続を行ったり、スマホ同士やテレビモニター等でデバイス間通信するといった用途だ(図表1)。現状ではLiFi搭載デバイスがないため、既存のPC等にドングルを指して通信する。
図表1 Li-Fiの概要とユースケースのイメージ
もともとLiFiは、電波による無線接続を補完・拡張することを目的として作られた技術だ。トラフィック需要の急騰により、将来的に電波資源が不足することが危惧されている。電波の数千倍もの帯域が使える光で、それを補おうというのだ。
LiFiが最初に登場したのは、2011年のこと。エジンバラ大学(スコットランド)のハラルド・ハース教授が提案し、pureLiFi社を共同設立して2012年から製品を展開した。
11bbの標準化を主導したのも同社で、標準化タスクグループの議長を務めた。
Wi-Fiを補完するコンセプトは、11bbの仕様からも窺える。光を使うこと以外は、11axの仕様にほぼ準拠している。pureLiFiの代理店である太平貿易 光学機器課 課長代理の渡辺蔵丸氏は「様々なWi-Fi機器への統合も容易だ」と話す。
太平貿易 光学機器課 課長代理 渡辺蔵丸氏
モバイル機器に組み込み可能な、初の量産型アンテナモジュール「Light Antenna ONE」もリリースされている(下写真)。現状の性能は、最大通信速度が1Gbpsで、通信距離は20cmから3mだ。