NECは2023年8月25日、9月1日の防災の日を前に、「減災・防災に貢献する先端AI技術の説明会」を開催した。
説明会では4つの技術が紹介されたが、今回初発表となったのが「大規模言語モデル(LLM)と画像分析による状況把握技術」だ。
大地震などの災害時には、素早く救出できるほど生存率が高く、発災後72時間以内に救助活動を行うことが重要であることが広く知られる。人命救助に留まらず、迅速かつ適切な初動が早期復旧・復興につながることも明らかになっている。
迅速な初動のためには被災現場の状況を詳細に把握することが必要だ。最近は、震度や降水量の分布、SNSなどのテキスト情報などに加えて、スマートフォンやドライブレコーダー、街頭カメラなどの画像を集めて活用する動きが出てきているが、画像活用には2つの課題がある。
1つは、膨大な画像から必要な画像を絞り込むことが難しく、被災状況を把握しづらいという点だ。もう1つは、被災場所の特定だ。集まった画像にGPSによる位置情報が登録されているとは限らず、写真だけでは向かうべき場所を特定することが難しい。災害時の実用のためには、番地レベルの特定が必要になる。
こうした課題をクリアするためには、現場画像から利用者の意図に応じて必要な情報を抽出することがカギとなる。
画像絞り込みと高精度な位置特定で初動迅速化
デモ画面。左側のチャット欄で表示されている画像の番号と、右側の地図上にプロットされた番号が対応している
そこでこの技術では、災害時の現場画像の絞り込みにLLMを活用している。加えて、画像の類似性判定も活用している。具体的には、会話型インターフェースに「建物が倒壊している画像を探してください」といったように入力すると、マッチした画像を表示する。その画像から目的とは異なるものを指定して取り除くことにより、意図に合致した画像を絞り込むことができる。
場所の推定には、現場画像から道路や建物などの領域を自動抽出し、地図データと照合する技術を用いる。2022年2月には現場画像と上空から撮影した画像を照合して位置を推定する技術を発表していたが、今回発表した技術では道路のレイアウト情報などを地図と照合する。これにより、世界最高水準の精度を実現したという。
災害時には倒壊や火災などにより、平時と景観が変化する。樹木の伐採や建物の建設、取り壊しなどによる変化は従来技術でも対応できていたが、建物の一部倒壊や道路の浸水による景観変化にも今回対応した。
「大規模言語モデル(LLM)と画像分析による状況把握技術」の概要
現在開発中のシステムではオープンソースのLLMを使用しているが、モデルは必要に応じて差し替えることができるという。NECが自社で開発を進めるLLMは日本語に強いため、その特性を活かした利用も想定していると担当者は説明した(参考記事:NECが独自開発の生成AIを提供開始 日本語能力と軽量に強み|BUSINESS NETWORK)。
この技術により、災害時の初動迅速化が期待されている。2025年度中の実用化を目指し、自治体と実証実験を進めていくという。