SPECIAL TOPIC「NVIDIA AI DAYSレポート」エヌビディア・ドコモ・富士通が見据える「5G RANの将来」

5Gの無線アクセス(RAN)が目覚ましい進化を遂げようとしている。カギとなるのは、エヌビディアのGPU/DPUだ。AI時代に起こる5G RANのこれからの進化について、エヌビディア、NTTドコモ、富士通のキーパーソンが「NVIDIA AI DAYS」で語った。

ドコモ・富士通が語る「オープンRANの今と未来」
続いて行われたパネルディスカッションでは、NTTドコモ 無線アクセス開発部長の安部田貞行氏と富士通 モバイルシステム事業本部長の谷口正樹氏も交えて、オープンRANの現状と展望について議論が行われた。

なぜRANのオープン化が必要なのか、その背景と狙いについて説明したのがドコモの安部田氏だ。

オープン化によって異なるベンダーの機器を組み合わせてRANを構成できるようになれば、「新しいサービスを提供するのに必要な技術を備えるベンダーの装置やソフトウェアをタイムリーに導入できる」と同氏。5Gでは、超高速通信や低遅延通信といった特徴を活かしてこれまでにない様々なサービスが生み出されることが期待されており、「様々なソリューションを持ったベンダーとパートナーを組むことで、バーティカルなサービスが提供できる」と期待を述べた。

こうした世界を実現するため、ドコモではまず装置間インターフェース、具体的にはCU/DUとRUとの間のインターフェースのオープン化に取り組んでいる。このオープンインターフェースに準拠した「マルチベンダーのオープンRANを5G導入時期から展開しており、相互接続性についてはかなり安定してきている」という。

ドコモのオープンRAN戦略
ドコモのオープンRAN戦略(クリックして拡大)

そして、次のステップである「装置内のオープン化」、つまりvRAN(仮想化RAN)の開発も進めている。安部田氏は具体的な取り組みとして、2021年2月に海外通信事業者へのオープンRAN展開を目的したパートナーシップ「5GオープンRANエコシステム」を立ち上げたことを紹介した。これには富士通とエヌビディアも参加している。

このエコシステムでは単にRANのマルチベンダー化を目指すだけでなく、「ベンダーの強みを融合することで価値を生み出す」ことに重点を置いていると安部田氏は説明した。ドコモR&Dセンタに構築したvRAN検証環境に海外からもリモートでアクセスできるようにすることで、海外の通信事業者も巻き込みながらエコシステムを拡大し「オープン化の流れを加速させていきたい」という。

オープンRAN海外展開の狙い
オープンRAN海外展開の狙い

富士通の谷口氏も同様にエコシステムの重要性を強調した。同社もマルチベンダー検証ラボを北米に構築しており、「マルチベンダーのインターフェースを定義するだけでなく、あらゆるベンダーとの接続試験を活発化させていきたい」と話した。

同社では「ネットワークだけでなくアプリケーション用途にも使える」ことから、5GシステムにNVIDIA GPUを採用しているという。CU/DUおよびMECの機能を動作させるエッジサイトで、エヌビディアのアクセラレータカードを活用する考えだ。現時点ではDU機能のみの小規模システムを実現しているが、「より大規模なネットワークシステムをGPU上で作り、MECもそこに載せていく。これを2021年度末までに実現した後、運用自律化も含めて進化させていきたい」と今後の計画を語った。

富士通5Gシステムの開発ロードマップ

富士通5Gシステムの開発ロードマップ(クリックして拡大)

vRANは2021年度内に実用化へ

オープンRANの今後の展開については、どう考えているのか。

ドコモの安部田氏はvRANの実用化に関して、「アクセラレータを使うことで、2021年度内には求めている性能を実現できると考えている」としたうえで、レガシー設備との連携も含めて徐々に展開していく方針を示した。

パートナーと共同で進めるオープンRANソリューションの海外展開については、ネットワーク機能と、その上で提供するサービスも合わせて展開していく考えだという。「ネットワークがオープン化されていれば、新しいサービスが載せやすい」と同氏。国内の5Gサービスを海外展開するだけでなく、「オープンなプラットフォームがあれば、海外で展開されているサービスを日本に持ち込んでくることも容易になる」とした。

パネルディスカッションの参加者
パネルディスカッションでオープンRANの取り組みを説明した
NTTドコモ 無線アクセス開発部長の安部田貞行氏(左上)、
富士通 モバイルシステム事業本部長の谷口正樹氏(右下)、
エヌビディア デベロッパーリレーションズマネージャーの野田真氏(右上)と、
司会進行のエヌビディア ストラテジックアカウント本部長の齋藤弘樹氏(左下)

一方、基地局設備やソフトウェアを提供するベンダーである富士通にとってオープン化は市場シェアを高めるチャンスにもなるが、谷口氏は「ここでしっかり勝つ」と意気込みを見せた。その戦略については、「性能/機能面で(他社を)凌駕するという面ももちろんあるが、ゴールは別にあると思っている」とした。

具体的には、RANを管理制御する機能である「RIC(RAN Intelligence Controller)を充実させるなど、今後さらに拡張させていける可能性を追求することが、富士通を選択していただける要素になると考えている」という。モバイルネットワークの制御にAIを活用していく方針を示し、まずはポリシー制御への活用から始め、「ゆくゆくはトラフィック量に合わせてリソースを自動的に制御するといったところにAIを活用するソリューションを強みにしていきたい」と展望した。

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