韓国モバイルビジネス動向ウォッチ[第11回]中国のモバイル決済を制したのはNFCか、中国移動が推進する独自規格RF-SIMか?

モバイル先進国、韓国をウォッチしながら、新しいモバイル関連ビジネスの種を見つけていく本連載。今回は番外編として、中国のNFCモバイル決済動向についてレポートする。

SDpass対応スマートフォン、100ドルを切るNFCリーダーなどが展示

現在のところ中国の携帯電話事業者は、NFC内蔵スマートフォンの投入を予定しておらず、当面はアドオン方式でNFCに対応していくものと思われる。前述のSIMpassは2011年8月現在ですでに300万枚が配布されている。

前回紹介した通り、microSDベースの「SDpass」も登場している。SDpassも同じくWatchData社製である。

microSDベースの「SDpass」。NFCチップと専用アンテナが付属している
microSDベースの「SDpass」。NFCチップと専用アンテナが付属している

中国銀聯がSDpassを開発したのは、通信事業者からの独立性をより確保するためだ。SIMカードは通信事業者の管理下にあり、NFC機能をSIMカードに実装しているかぎり、通信事業者からの独立性は弱まる。そのため通信事業者の都合により、NFCを使ったアプリやサービスに「制限」が設けられる可能性もある。一方、SDカードは、通信事業者の管理下にはない。

今年9月1~3日、中国・北京で開催された「2011中国国際金融展」では、SDpass対応のスマートフォン「HTC Sense」などが発表され、その実物も展示されていた。

SDpassを搭載したHTCやTCL製のスマートフォン
SDpassを搭載したHTCやTCL製のスマートフォン

中国国際金融展では、中国銀聯がiPhone/iPad向けのNFCソリューションも紹介していた。米国でブレークしているSquare社のイヤホンジャック接続型カードリーダーのNFC対応版を利用したものだ。従来は磁気カードにしか対応していなかったが、市場のニーズに応えるため、Square社はNFC対応版を開発したようだ。

NFC対応となったiPhone NFC対応となったiPad
米Square製のNFC対応リーダーを装着したiPhoneとiPad。イヤホンジャックに接続された白い箱が米Square社製のNFCドングルである

これにより中国銀聯は、Android、フィーチャーフォン、iPhone/iPadのすべてに対してNFCソリューションを用意したことになる。ABIリサーチによると、中国のモバイル決済市場は2014年に約8000億円になると予想されているが、中国銀聯と携帯電話事業者はこのうちどれくらいを扱うことになるのか大変興味深い。

NFCが成功するうえでは、リーダーの普及も重要なカギを握る。今回の展示会では、小額決済用のハンディー型NFC対応POS端末が100米ドルを切る価格で展示されていた。中国銀聯の担当者によると、このような安価なリーダーを今後店舗に配備していくのだという。対応端末が普及し、さらに多くの場所にリーダーが設置されるようになれば、NFCによるモバイル決済は一気に進捗するに違いない。

低価格のハンディタイプNFCリーダー
低価格のハンディタイプNFCリーダー

今後はグーグルと世界戦!?

世界最大の人口を抱える中国が世界市場に与える影響はきわめて大きいが、1つの興味は将来、グーグルが推進する「Google Wallet」と中国銀聯のNFCが融合することがあるかどうかである。近年のグーグルと中国(政府)の関係を見るかぎりは、協調よりも競合の色合いが濃いと思われる。

あるレポートによると、中国銀聯の提携カードの発行枚数はVISAの提携カードの発行枚数をすでに超えているそうだ。おそらく今後は中国国内での覇権争いから、中国対グーグル(Citi/Master)の世界レベルでの覇権争いになるであろう。果たしてこの覇権争いに日本は参加していけるのであろうか?

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橋本清治(はしもと・せいじ)

IT業界での30年の経験を生かし、某外資系通信機器ベンダー勤務の傍ら、エムアンドエムリサーチを運営。主に海外の通信事情リサーチやベンダーの日本進出の支援を行う。現在は特に韓国のモバイル通信事情を注視している。表面的な事実の調査だけでなく、必要があれば現地調査も行う行動派リサーチャ。“真実は体で確かめる”が身上。コンタクトはinfo@mmrjp.comまで

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