「日本最速のサービスを、ドコモのLTEサービスを大きくしのぐ人口カバー率60%のエリアで提供する」――。ソフトバンクモバイルの孫正義社長は、11月4日に開催した秋冬モデルの発表会で、同社が2011年2月下旬以降にスタートさせる「DC-HSDPA」による下り最大42Mbpsの高速データ通信サービス「ULTRA SPEED」の特徴をこう説明した。
ドコモのLTEを意識した「ULTRA SPEED」
DC-HSDPAは、現行のHSPAの発展システムで、下り最大21Mbpsのデータ通信が可能な「HSPA+」の搬送波を2本束ねて使うことで、通信速度を倍に向上させるシステム。日本では12月にイー・モバイルが初の商用サービスをスタートさせている。今回、ソフトバンクがDC-HSDPAを導入する周波数帯は、2009年6月に新たに割当を受けた1.5GHz帯の10MHz幅だ。
ソフトバンクは2010年1月からこの帯域でW-CDMA/HSPAを運用しており、今春までに約9000局の基地局を整備する計画を明らかにしている。その多くはW-CDMA/HSPAの2波運用局となるが、同社では1月からこれら基地局をソフトウェアアップグレードでDC-HSDPAに対応させたうえで、対応端末の発売を待って下り最大42Mbpsのサービスを商用化する。対応端末は、2月下旬以降に発売予定の法人向けUSB型データ通信端末「004Z」をはじめ、モバイルWi-Fiルーターの「007Z」(以上ZTE製)、USB型の「005HW」(ファーウェイ製)の3機種の投入が予定されている。
ULTRA SPEED対応機種。左から「007Z」(ZTE製)、「005HW」(ファーウェイ製)、「004Z」(ZTE製) |
ソフトバンクでは2011年6月までにULTRA SPEEDの42Mbpsエリアを人口カバー率60%にまで拡大する計画だ。冒頭の孫社長の発言は、ULTRA SPEEDのエリアがこの時点で、下り最大37.5MbpsとなるドコモのLTEサービスの人口カバー率20%を大きく上回ることをアピールしたものだ。
孫社長の発言から分かるように、ULTRA SPEEDは、明らかにLTEへの対抗を意識したサービスだ。後日発表される料金水準次第では、一定の競争力を持つことになろう。
ソフトバンクは主力バンドの2GHz帯に対し、1.5GHz帯を容量補完バンドと位置付けており、デュアルバンド端末を使ってデータトラフィックについては優先的に1.5GHz帯に流す戦略をとっている。
しかし、ソフトバンクの牽引役であり、トラフィック面でインパクトが大きいiPhoneなどのスマートフォンは、1.5GHz帯をほとんどサポートしておらず、その効果は限定的となっている。ULTRA SPEEDの導入には1.5GHz帯の有効利用という側面もあるようだ。