今春までに、携帯電話4社が新たな通信システムによる高速データ通信サービスを投入する。
先陣を切ったのがイー・モバイルだ。現行HSPAの発展系となるDC-HSDPAを導入し、12月3日から下り最大42Mbpsの高速データ通信サービス「EMOBILE G4」をスタートさせた。ソフトバンクモバイルも2011年2月下旬以降にDC-HSDPAによるサービスを「ULTRA SPEED」の名称で開始する計画だ。12月24日にはNTTドコモがLTEによる下り最大37.5Mbps(屋内施設では75Mbps)のサービスを「Xi」(クロッシィ)のブランドで投入した。KDDIは、2009年7月からグループ会社のUQコミュニケーションズを通じて最大40MbpsのWiMAXサービスを提供しているが、さらに2010年11月からはKDDI自身も現行のCDMA2000 EV-DO Rev.Aの発展系となるEVDOマルチキャリアを導入、最大9.2Mbpsのデータ通信を可能にした。
トラフィック爆発に対応
携帯各社による新システムの導入には大きく2つの狙いがある。1つはデータ通信速度の向上や遅延の短縮によるユーザービリティの改善である。これらはサービスやアプリケーションの可能性を大きく広げることにもなる。これにより成長分野であるデータ通信市場での競争を優位に進めようというのだ。
もう1つ、それ以上に大きな狙いとして挙げられるのが、コンテンツのリッチ化やスマートフォンの普及に伴い、劇的な伸びを見せているデータトラフィックへの対応である。
例えばLTEは、現行モバイルデータ通信の主力であるHSPAの3~4倍の周波数利用効率を実現しており、急伸するトラフィックを効率的に収容できる。こうした需要の拡大に対応するために総務省も2009年6月にLTEなどの導入を想定した新たな周波数の割当を行っており、これがインフラの高度化を加速させる要因の1つとなっている。さらに現在、700MHz、900MHz帯の割当の検討が総務省で進められている。
こうした中で各社ともさらなる高速大容量のインフラ整備に動き出しているというのが現状なのだ。図表に示した通り、2014年には100Mbps超のサービスの登場が見込まれる。
図表 携帯4社のモバイルデータ通信の高速化ロードマップ |
それでは次回から、新たな高速データ通信サービスを軸に、携帯各社の次世代インフラ戦略を見ていく。
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