本章の最後に、企業においてソーシャルテクノロジーがどのように活用されているか、その事例を紹介してみたいと思います。
1.3.1 経営陣にとってのソーシャルテクノロジー(事例:日本マクドナルド)
日本マクドナルドの経営は2003年当時、非常に危機的な状況にありました。そうした中でCEOに就任し、経営の舵取りを担うことになった原田泳幸氏は、社内ブログを使って13万人の社員とクルー(アルバイト・パートタイマーに対する呼称)に対して、経営者としてのメッセージを送り続けました。その狙いは、トップが考えていることを直接伝えることによって、個々の社員が直属の上司から言われたことだけをこなすのではなく、自分の頭で考え、創意工夫することを促すことにあったと、その著書『日本マクドナルド社長が送り続けた101の言葉』(2008年、かんき出版社刊)に記しています。
日本マクドナルドはその後、業績を急速に回復させていきます(2003年度に約18.9憶円だった同社の経常利益は2008年度、約182.3憶円に拡大)。これは、原田氏をはじめとする経営陣の手腕に加えて、トップの考えが現場の社員にまで伝播し、組織や人を動かしたからだ言われています。
1.3.2 社員にとってのソーシャルテクノロジー(事例:NTTデータ)
企業がブログを徐々に社内に取り込み、「イントラブログ」といった言葉が生まれつつあった2006年に、NTTデータは企業変革プロジェクトの中で社員が企画した社内SNS「Nexti」を稼働させました。
“セクショナリズム打破”を目的に生まれたNextiは現在、NTTデータおよびグループ会社の社員約9,300名が登録し、コミュニティの数が1,000を越えるまでに成長しています。オンライン・オフライン活動を通し、職場や社内サークル、入社年次など様々な関係性で社員同士がネットワーク化され、経営陣と社員が気軽に会話するなど、縦・横・ナナメで活発にコミュニケーションが進められています。さらに、徐々にグループ会社にも門戸を開き、利用者数やダイバーシティをますます拡大しています。
この事例については、第3章以降で詳しく紹介します。
1.3.3 顧客にとってのソーシャルテクノロジー(事例:@cosme)
アイスタイルの運営する「@cosme」は、国内最大となる化粧品専門の“口コミ”サイトです。国内外1万9,500ブランド・17万点の商品データベースを構築し、口コミ投稿数は累計740万件を突破しています。
@cosmeでは、消費者から集めた口コミ情報を商品別をはじめ、消費者プロフィール別、時系列など多角的に分析。“消費者評価”という形で化粧品メーカーにフィードバックしながら、メーカー個別では難しいとされる口コミ情報の収集・分析を実現しています。また、メーカーと協力して新商品を企画したり、自ら出店する店舗でも消費者の声を集めたりするなど、「消費者商品化粧品メーカー」をつなぐ新ビジネスを展開しています。
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