JTOWERが共用装置でローカル5G市場に参入する。
すでに開発を完了し、現在は主要なローカル5G 無線システムとの接続等試験を行っているところだ。2022年内の商用化を目指している。
これまでJTOWERは、通信事業者向けに屋内外のインフラシェアリング事業を展開してきた。このうち屋内については、建物内の機械室に設置することで4キャリアの5G基地局と接続可能にする共用装置を開発・提供している。
今回開発したローカル5G共用装置は、このキャリア5G共用装置をローカル5Gに割り当てられているSub6帯に対応させたもので、最大で通信事業者4社とローカル5G提供事業者2社での共用が可能だ。
この共用装置を利用すると、異なる周波数帯の電波を1つに束ねてアンテナに分配させる仕組みにより、従来は通信事業者/ローカル5G提供事業者ごとに敷設していたケーブルやアンテナを1つに統合できるほか、資材や工事工数も削減できる。つまり、商業施設の運営会社やビルのオーナーは、コストを抑えてローカル5Gを導入することが可能なのだ(図表1)。
図表1 ローカル5G共用装置のサービス展開イメージ
光DAS(Distributed Antenna System:分散システム)と呼ばれる、複数の電波を1つに束ねてアンテナに分配するこのシステムは2G以降、ビルや地下街、スタジアムなど屋内外の様々な場所で使われているが、ローカル5Gで対応するのはJTOWERが初めてだという。
ローカル5Gで屋内を広くカバーするには、例えば同軸ケーブルと分配器を用いてアンテナを分配する方法がある。それと比べてローカル5G共用装置は光ファイバーでアンテナ手前まで延伸することができ、距離の制約が少ないため、「基地局1基で広くエリアをカバーしたり、ビル内の複数フロアにまたがってエリア化するときに特に強みを発揮する」とJTOWER 執行役員 スマートシティ推進部 副部長 兼 渉外室長の大橋功氏は説明する。
JTOWER 執行役員 スマートシティ推進部 副部長 兼 渉外室長 大橋功氏
周波数スライシング的な活用も同一エリアでキャリア5Gとローカル5Gの使い分けが可能になることもローカル5G 共用装置のメリットだ。具体的にどのような用途が考えられるの
だろうか。
一例が、ショッピングモールやスーパーなどだ。
これらの商業施設では、通信事業者のネットワークはあくまでも顧客を対象にしており、売り場や共有スペースを中心に整備されている。バックヤードでは主にWi-Fiが使われているが、帯域不足からインターネットにつながりにくいケースが少なくない。ミッションクリティカルな業務に活用できる無線ネットワークへのニーズも根強くある。
ローカル5G共用装置であれば、パブリックの無線ネットワークとしてキャリア5Gを来店客など多くの人が使う一方、バックヤードの業務にセキュアなローカル5Gを利用するといった使い方ができる(図表2)。
図表2 キャリア5Gとローカル5Gが並存するユースケース
5G SAでネットワークインフラを仮想的に分割し、用途に応じたサービスを提供するネットワークスライシングが実現すれば、こうした使い分けはキャリア5G だけでも可能になる。しかし、ネットワーク全体でスライスをコントロールし、多様なニーズに対応できるようになるまでにはまだ時間がかかることから、「共用装置によるキャリア5Gとローカル5Gの使い分けのニーズはある。我々としても積極的にソリューションを開拓していきたい」(大橋氏)と意欲を見せる。
また、「同じ施設内で、ローカル5G提供事業者2社それぞれの特徴を活かしたサービスを提供したり、用途に応じて帯域を使い分ける“周波数スライシング”のような使い方も能」だという。