AzureアプリでMECを迅速展開 B2Bビジネス創出も下支えマイクロソフトはパブリッククラウドの利点をフル活用できるこの仕組みを、AT&T以外の通信事業者にも広げようとしている。AT&Tから承継した技術・知見を活かし、Azure上でキャリア網を構築・運用するためのソリューション群「Azure for Operators」を拡充しているところだ。
Azure for Operatorsは、上述の仮想化クラウド基盤AODSに加えて、コンテナ化されたネットワーク機能やOSS/BSS、そして5G MECで使えるAzureアプリケーションまで包括的に提供することで、通信事業者の変革を支援するものだ。「通信キャリアのスピード感ある事業領域拡張とコスト効率的な事業運営の両側面を支えたい」と大友氏は話す。
これを実現するため、マイクロソフトはAODS以外にも次々と新たなソリューションを準備している。
1つが、サブスク方式で利用できる5Gコア「Azure Operator 5G Core」だ。AT&Tも使っているクラウドネイティブコアをベースとしており、NSA/SAの両方式に対応。2023年に一般公開を予定している。
エッジ向けにも2つのソリューションを準備中だ。
特定の企業に対してプライベート5GネットワークとMEC基盤/アプリケーションを提供する場合に使えるのが「Azure Private 5G Core」だ。工場や店舗等にAzureサーバーを設置するAzure Private MEC環境で5Gコアを運用。各種のAzureアプリも一緒に利用すれば(図表2の上側)、ユーザー企業に対して工作機械の制御やeスポーツ、リアルタイムAI分析といった超低遅延サービスを提供できる。
図表2 Azure for Operatorsを活用したB2Bビジネス創出(画像クリックで拡大)
より広範囲な町・市レベルでMECサービスを提供したい場合に適しているのが「Azure Public MEC」だ。通信事業者のエッジデータセンターに“小さなAzure”を張り出し、Azureアプリケーションを使って低遅延サービスを提供できる(図表2の下側)。スマートシティや自動運転、社会インフラ管理といった広域のユースケースに適する。
いずれも、MECサービスを迅速に立ち上げられることが最大の利点だ。これまでなら最低でも半年かかっていたネットワーク設計・構築が数週間で完了。サービス提供までの期間を短縮することで早期の収益化も可能となろう。
このようにマイクロソフトは、プライベート5GやMECを活用して通信事業者がB2Bビジネスを発展させるための土台づくりを目指している。上記のソリューション群に加えて、「様々な産業界とのリレーションがある。B2Bビジネスの実績も我々の強みだ」と大友氏。「どの業界にどんな課題があり、そこでAzureがどう使えるか、5Gが加わるとどんな可能性が広がるのかについて、これまでもエンタープライズと議論してきた。通信事業者にもこのリレーションを活用してほしい」という。AT&Tとはもちろんのこと、日本国内でもユーザー企業、通信事業者との三者で5G活用に向けた検証を始めている。
コンシューマ向けの既存ビジネスが伸び悩むなか、インフラ運用の効率化やB2Bビジネスの創出といった課題に直面する通信事業者にとって、マイクロソフトは心強いパートナーとなるだろう。
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