京セラが電波の進行方向を変える透過型メタサーフェス屈折板を開発、ミリ波5Gのサービスエリアの拡大に貢献

京セラは2022年3月28日、電波の進行方向を所望の方向に変えることができる透過型のメタサーフェス屈折板を開発したと発表した。これにより、高い周波数を用いたミリ波5Gや6G等において、障害物により通信できない場所へも電波を届けることが可能となり、サービスエリアの拡大に貢献するとしている。

透過型メタサーフェス屈折板(試作サンプル)

5Gで用いられている28GHz帯や6Gに向けて検討されているさらに高い周波数帯の電波は直進性が強く、障害物により基地局から見通しが得られない場所では通信品質を確保できないという課題がある。その解決のため、一般的には電波を特定の方向に反射させることができるメタサーフェス反射板が提案されている。しかし、反射板を用いた場合、変えられる電波の方向には限界があった。そこで京セラは、進行方向に対し小さい角度で電波を曲げることができる透過型のメタサーフェス屈折板の開発に取り組んできた。

従来型のメタサーフェス反射板は、 反射板より手前側に、電波の進行方向に対して大きな角度で曲げる場合には有利だが、向こう側に小さな角度で曲げるのには向かない。これに対し、メタサーフェス屈折板は、小さな角度で曲げる場合に有利で、障害物を回避するような使い方に向いている。反射板に加えて今回開発したメタサーフェス屈折板を用いることで、電波を曲げる範囲を拡大し、5Gサービスエリアをさらに拡大することが可能となる。

また、メタサーフェス屈折板が電波を届けられるエリアは、板自体のサイズに比例する。従来技術では実用化に充分なサイズの屈折板を開発することが困難だったが、 京セラは独自技術により、任意のサイズの屈折板を開発することに成功した。これにより、街中や家のベランダなど様々な場所への設置が可能となる。

京セラは、鹿児島国分工場に設置した28GHz帯ローカル5Gの環境を用いて、メタサーフェス屈折板の効果を確認する実験を実施した。

建物の壁が障害となり、屋外に設置された基地局からの見通しが得られず受信電力が低いA地点(受信電力:-97dBm)と、窓を通して基地局を見通すことができ受信電力が高いB地点(受信電力:-67dBm)の2カ所の端末を設置。窓の外の踊り場に、A地点に電波を届けるようメタサーフェス屈折板を設置すると、A地点 での受信電力は-68dBmとなり、見通し内と同程度の受信電力が得られ、メタサーフェス屈折板の有効性が確認された。

京セラでは現在、景観に配慮した透明タイプの屈折板や、特定の場所に電波を集束させ受信電力を向上させる技術改良を重ねている。また、今後は端末の状況に応じて電波の向きを変えられるRIS(Reconfigurable Intelligent)の実現も目指していきたいという。

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