人類にとって最重要課題の1つとなった環境問題。その解決のため、イーサネットの世界でも、省資源化に貢献する新規格が登場している。「シングルペアイーサネット」と呼ばれる一連の規格群だ。
通常のLANケーブルは、8芯4ペアの信号線を使用する。対して、シングルペアイーサネットが用いるのはその名前の通り、1ペアの信号線だ。つまり、線材を75%削減できる。コネクターも省資源で、そのサイズは従来比約半分に小型化。ケーブルもコネクターもコンパクトなため、配線スペースを節約でき、取り回しも楽だ。
シングルペアイーサネット用のケーブルとコネクター
「2030年に向けて、様々な領域で新しい動きが起きている」
IEEE、ISO、IECで策定されたシングルペアイーサネットの国際標準規格に基づき、国内での共通仕様を規定している情報通信技術委員会(TTC)IoTエリアネットワーク専門委員会の安川昌毅氏は、こう指摘したうえで次のように続ける。
情報通信技術委員会(TTC)IoTエリアネットワーク専門委員会 安川昌毅氏
(NECマグナスコミュニケーションズ)
「LANケーブルにはこれまで大きな変化がなく、20年くらい前のケーブルが今でも使われている。2030年までに既存ケーブルからの移行を目指そうと各社と話している」
日本電線工業会によると、通信用電線・ケーブルの出荷量は年間1万5157t(2020年度)。このすべてがLANケーブルなわけではないが、その一部でも線材を4分の1にできることのインパクトは大きい。まして、シングルペアイーサネットは通信と電源を同時提供できるため、電源ケーブルをなくすこともできる。
既設のまだ使えるLANケーブルを無駄にすることもない。対応装置を用いれば、4回線分のシングルペアイーサネット用ケーブルとして利用可能だ。
「ケーブルなどの資材廃棄に伴うCO2排出の削減は、NTTでも非常に重要なテーマの1つになっている」。TTC IoTエリアネットワーク専門委員会の委員で、NTTアドバンステクノロジに所属する田島公博氏はこう語る。
情報通信技術委員会(TTC)IoTエリアネットワーク専門委員会 田島公博氏
(NTTアドバンステクノロジ)