富士通が狙うゲームチェンジ、光伝送オープン化に“2つの攻め口”

光ネットワークのオープン化には、米AT&TがリードするOpen ROADMとOTTが主導するTIPの2大潮流がある。実は目的が異なる両者に揃って注力するのが富士通だ。2つの攻め口でゲームチェンジを狙う。

通信ネットワーク業界に今、オープン化/マルチベンダー化の波が押し寄せている。5GインフラではオープンRAN(無線アクセス網)が大きな話題となっているが、それ以前から議論が盛んだったのが光ネットワークのオープン化だ。

これを積極的に推し進めているベンダーが富士通である。日本、そして北米でも光伝送領域で一定のシェアを持つが、「グローバルで見れば我々はチャレンジャー。欧州も含めて市場を拡大するには、オープン化は強力な武器になる」。フォトニクスシステム事業本部 光ソリューション事業部長の宮下卓也氏は理由をこう語る。

富士通 フォトニクスシステム事業本部 光ソリューション事業部長の宮下卓也氏
富士通 フォトニクスシステム事業本部 光ソリューション事業部長の宮下卓也氏

「2つできるのは富士通だけ」光ネットワークのオープン化を推進しているのは「Open ROADM MSA」と「TIP(Telecom Infra Project)」の2団体だ。Open ROADMは2015年に米AT&Tと富士通が創立メンバーとして設立し、現在28社が参加している。フェイスブックを中心に2016年に発足したTIPは、OTT主導で勢力を拡大しており、参加企業・団体は800を超える。

富士通はすでにOpen ROADMの仕様に準拠した製品・ソリューションを提供しており、商用ネットワークでも採用されている。「欧州や日本でも、今まさに導入へ向けた話をしている」(宮下氏)ところだ。

並行して、TIPでトランスポートのオープン化を目指す「Open Optical&Packet Transport(OOPT)」グループにも参画。NTTのほか、欧州のテレフォニカ、オレンジ、テリアが加わる「CANDI」プロジェクトで技術検討・検証を行ってきた。

そして今回、CANDIにおいてマルチベンダー構成の光ネットワーク運用の実証実験を実施し、6月に開催された世界最大の光通信の展示会「OFC2021」でその成果を披露した。「通信事業者が実際に行うネットワーク設計・運用に即したかたちで、マルチベンダー構成による統合制御・運用が可能なことを確認した」と光ソリューション事業部 シニアアーキテクトの長嶺和明氏は説明する。

富士通 光ソリューション事業部 シニアアーキテクトの長嶺和明氏
富士通 光ソリューション事業部 シニアアーキテクトの長嶺和明氏

この成果を基に富士通は、TIPアーキテクチャに準拠した世界初の「Optical SDN Controller」を2022年に商用化する計画だ。「光ネットワークをオープン化したいキャリアに対して、Open ROADMとTIPの両方を提供できるのは富士通のみ」(長嶺氏)。オープンネットワークへの移行をリードしていく考えだ。

月刊テレコミュニケーション2021年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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