エッジクラウド基盤を3つのコンポーネントで拡張もう1つのOperator Capabilitiesは、エッジクラウドの構築・実行環境で、4つのコンポーネントで構成されている。
中核となるのが、コンテナ(Kubernetes)ベースの仮想化基盤「Studio Cloud Platform」だ。ウインドリバーが持つ組み込みシステムの技術・ノウハウを生かして開発され、高い可用性と信頼性を有する。地理的に離れた場所にある多数の仮想ノードを5G網などにより接続して一元管理することで「分散型クラウド」を実現可能だ。ウインドリバーが推進しているオープンソースのエッジクラウドプラットフォーム「StarlingX」の商用版となる。
「長期間の運用を保証するライフサイクルマネジメント、サポート、IP管理など、StarlingXに商用エッジクラウドに必要なサービスを付加しています」とウインドリバー ソリューションエンジニアリング部 シニアソリューションアーキテクトの小宮山岳夫氏は説明する。
ウインドリバー ソリューションエンジニアリング部 シニアソリューションアーキテクト 小宮山岳夫氏
Studio Cloud Platformでは、「Studio OpenStack」というコンポーネントを付加することで、OpenStackで管理するエッジノードも一元管理できる。
加えて、運用の自動化や効率的な新サービス・機能の実装を可能にするオーケストレータ「Studio Conductor」、ノードから集約される大量の情報を分析し意思決定に役立つ情報を可視化する「Studio Analytics」もコンポーネントとして用意されている。Studio Analyticsを活用することで、トラブルの発生を事前に予測して警告を発するシステムも実現できるという。
図表1 Wind River Studio Operator Capabilitiesを構成する4つのコンポーネント
まずvRANソリューションとして展開青木氏の冒頭のコメントにあるように、ウインドリバーは、Wind River Studioをまず5G vRAN向けに展開しようとしている。「現時点で最も規模が大きく、製品との相性がいいユースケース」(青木氏)だからだ。
すでに商用導入も始まっている。
ファーストユーザーは米国の大手通信事業者ベライゾンだ。同社は昨年8月、エンドツーエンドの仮想化5Gネットワークを構築、高速・大容量、低遅延などの性能を検証する実証実験に成功したと発表した。そのvRANにウインドリバーのエッジクラウド基盤(現Studio Cloud Platform)が採用されたのだ。現在、ベライゾンは実験に用いた設備を商用インフラとして活用するともに、2021年中に1万4000以上の5G基地局の整備を進めている。
ベライゾンの5G vRANでは、 Studio Cloud Platformに搭載されている仮想化ノードの一元管理やゼロタッチでの自動管理機能や、Studio Analyticsの分析機能も活用されているという。
さらに今年6月、世界最大級のvRANを計画する英ボーダフォンも、ウインドリバーの採用を発表した。
従来のRANは、ソフトウェアとハードウェアを一体とした製品で構築されてきた。vRANでは、これがアプリケーション、仮想化基盤、COTSハードウェア(汎用サーバー等)の3層に分離される(図表2)。
Studio Cloud Platformが担うのは真ん中の仮想化基盤の層であり、ウインドリバーはStudio Cloud Platformを、O-RANやTIP(Telecom Infra Project)などのオープン仕様やインテルのvRANリファレンスデザインFlex RANなどに準拠した、vRANソリューションとして展開する。
図表2 Wind River Studio を用いた5G vRANの構築イメージ
エッジクラウドは他の仮想化基盤ベンダーも力を入れている分野だが、それではベライゾンやボーダフォンはなぜウインドリバーを選択したのか。
青木氏は、ウインドリバーがベライゾンに選ばれた理由として「Kubernetesにいち早く対応、ベライゾンが必要としていた『超低遅延』と『高可用性』を実現できたこと」を挙げる。
ボーダフォンの選択した理由は、「ウインドリバーが、実績のある分散型クラウドインフラストラクチャを提供できる唯一のサプライヤーであった」(青木氏)ことが大きいという。ベライゾンのプロジェクトでの実績が評価されたのだ。
サーバー1台から導入でき効率的な基地局展開が可能さらに青木氏は、ウインドリバーのvRANソリューションが通信事業者から支持されているのにはもう1つ大きな理由があるとする。
「一般的な仮想化基盤を用いた場合、基地局の構築には最も小規模なもので5~6台のサーバーが必要になります。当社の場合、1台のサーバーで基地局のクラウドが組め、センターの統合管理の下に置くことができるため、ルーラルエリアでの基地局の整備コストを大幅に引き下げることができます」(青木氏)というのだ。
仮想化基盤ベンダーのエッジクラウド製品は、主要顧客であるデータセンター向けのソリューションをエッジ向けにダウングレードして提供するものが多い。
これに対し、Wind River Studioは「スペースやリソースが限られた環境で最大のパフォーマンスを発揮できる設計を行っている」(青木氏)という。ウインドリバーの主戦場である組み込みシステムの技術・ノウハウが、エッジクラウドにも生かされているのである。
ウインドリバーでは今後、Wind River Studioを「5G vRANだけでなく、MECやコアネットワークなどにも展開していく」(小宮山氏)考えだ。
vRANにStudio Cloud Platformを採用している通信事業者は、MECのエッジノードをvRANと同じシステムで一元管理して効率的にMECサービスを提供することができる。
「同じアーキテクチャで1台から大規模システムにまで対応でき、高い可用性を持つWind River Studioはコアネットワークにうってつけ」(小宮山氏)だ。
さらに、Wind River Studioをローカル5G向けのソリューションとして展開することも視野に入れているという。
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