データセンター(DC)ネットワークではここ数年、ハードウェアとソフトウェアの分離が進んできた。
最大の動機はイニシャルコストの低減だ。ハード/ソフトが一体の従来型スイッチに比べて価格が安いホワイトボックススイッチ(WBS)とネットワークOSを組み合わせることでCAPEXを削減。光トランシーバーまで含めてマルチベンダー化できれば圧倒的な低コスト化も可能になる。
加えて、ハードとソフトを個別に調達できるようになることで、例えば同じOSを使い続けながらハードを高性能なものに入れ替えるといった柔軟な運用も容易になる。オープンソースのOSを採用して自ら機能を開発したり、サーバー/ストレージとネットワークの一体運用、自動化に取り組む先進ユーザーも増えている。
Cumulus買収がブレーキにGAFAを端緒とするこうしたディスアグリゲーションは数年前から日本にも波及している。デル・テクノロジーズ グローバルネットワーク事業本部 シニアシステムズエンジニアの佐々木亮氏は「新興の事業者では、オープンネットワーキングが基本的にファーストチョイスになっている」と話す。
ただし、その勢いに水を差しかねない動きも起こっている。OSベンダーの買収だ。DCネットワークで広く使われてきたWBS用ネットワークOS「Cumulus Linux」を提供するCumulus Networksを2020年にNVIDIAが買収した。
WBS用OSの選択肢はまだ豊富とは言えない。特に日本は「有償サポートがしっかりしている商用OSが好まれる」(佐々木氏)ため、Cumulus Linuxが支持を獲得してきた経緯がある。オープンソースも増えてきているが、これまでは評価・検証目的での採用がほとんどだった。
半導体メーカーであり、Mellanoxも買収したNVIDIAは基本的に同社製WBSのみをサポートの対象とする方針。デルのシニアシステムズエンジニアを務める秋山しのぶ氏は、「エンドユーザーが“オープン化しよう”となったときの選択肢がどんどん狭まってきている」と話す。3年前からオープンネットワーキング事業を進めるAPRESIA Systems 取締役 エンタープライズ事業部長の水谷渉氏も「オープンだったはずの技術が、そうでなくなっていく流れが出てきた」と懸念を示す。