目指すは「1兆」のIoT 1円玉サイズのLeafony

誰でも自由自在にIoTのサービスを開発できるようになれば、IoTは加速する。オープンソースのLeafonyはこのような世界の実現に向けて鍵になる可能性を秘めた超小型デバイスだ。

IoT端末の数は爆発的に増えている。米調査会社IHS Technologyによると、2016年に世界で約241億台だったIoT端末は、2021年には約447億台になる見込みだ。IoTが世の中に広まっていくことは疑いようがないが、「2030年代にはIoT端末は1兆個(トリリオン)にのぼるという予想もある。しかし、IoTが本当に花開くには、多くの人のアイデアが集まる仕組みを考えなくてはいけない」と東京大学名誉教授でトリリオンノード研究会代表の桜井貴康氏は指摘する。

東京大学名誉教授 トリリオンノード研究会代表の桜井貴康氏
東京大学名誉教授 トリリオンノード研究会代表の桜井貴康氏

IoTの世界が広がるには、多様なサービスが欠かせない。そして、多様なサービスを生むにはもっと企業やユーザーが手軽にIoTを利用し開発できるようになる必要がある、というのが桜井氏の考えだ。「大企業にいるエンジニアが思いつくようなサービスだけでは限界がある。一方で、今は個人の思い付きが、1000人に1人にしかニーズがなくとも十分ビジネスになる時代だ。例えば、朝にパッと目が覚めたらカーテンが開くとか、1日に何回排便したか知りたいというような身近な要求をIoTで実現させていかなくてはならない」と桜井氏は語る。

超小型・低消費電力のボードこうした背景から生まれたのが、IoTシステムを開発するためのツールキットおよびそのソフトウェアの「Leafony(リーフォニー)」である。

2017年に始まったNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト」の成果をもとにトリリオンノード研究会が開発し、その仕様書、回路図、パターン図、応用例、ソフトウェアなどをオープンソースとして公開した。

個人やスタートアップでも気軽にIoTシステムを開発できるキットとしては、すでに「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」や「Arduino(アルディーノ)」などが存在するが、Leafonyにはこれらにない特徴がいくつかある。

Leafonyおよびそのケースの外観。全体で1円玉ほどの大きさで非常に小さい
Leafonyおよびそのケースの外観。全体で1円玉ほどの大きさで非常に小さい

まずは写真で見てもわかる通り、1円玉ほどの超小型デバイスであること。リーフ(Leaf)と呼ばれる約2㎝4方の電子基板(ボード)に、Arduino互換のコネクタやセンサーなどを搭載している。このリーフを組み合わせたものがLeafonyだ。Arudinoなどでは、1つの大型のボードにCPU、通信用のSIM、センサーなどをまとめて搭載している。これに対してLeafonyでは、あるリーフにはSIM、別のリーフにはセンサーを載せるといったように、リーフごとに細かく役割を分割して開発を進め、これらを結合する。リーフ同士の結合にはんだ付けは不要で、手だけで組み立てられる。

「IoTでは開発後にやはり想定と違った、ということも多い。通常のマイコンボードならば、そのたびに全体を作り直さなくてはならないが、Leafonyなら問題があった箇所のボードだけを修正・交換すれば済むため、開発効率がいい。細分化されていると障害時の原因特定も容易になる」と桜井氏は解説する。

月刊テレコミュニケーション2020年11月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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