フェーズ3のポイントは「アプリケーションの高速化・仮想化」
シスコがボーダレスネットワークの発表を行うのは昨年10月、今年3月に続いて3回目であるが、ボーダレスネットワーク関連製品ポートフォリオも今回大幅に拡充された。
第3弾となる今回のキーワードの1つは「アプリケーション」だ。アプリケーションの高速化や仮想化のための「Application Velocity」が登場した。
説明会ではApplication Velocityを実現する具体的な新製品として、同社のブランチ向けサービス統合ルーター「Cisco ISR G2」用の3つが紹介された。まずは「Cisco WAAS Express」だ。これはCisco IOSをベースとしたWAN最適化ソリューション。レイヤ4までにしか対応しないが、ソフトウェアのみで対応できるため低コストなのが特徴だという。
アプリケーションのパフォーマンスを向上させるApplication Velocity |
2番目は、ISR G2用のブレード「Cisco Services Ready Engine(SRE)モジュール」対応の「Cisco WAAS on SRE」である。WAAS Expressとは違い、同社のアプライアンス型WAN高速化ソリューションと同等の機能が、より少ない設置面積と消費電力で実現できる。
3番目は「Cisco UCS Express」で、専用サーバーを使用することなく、ISR G2上でサーバー仮想化を実現するもの。SREブレード上でVMware vSphere HypervisorやMicrosoft Windowsサーバーを稼動させられる。
モジュラー型スイッチ「Cisco Catalyst 4500Eシリーズ」が、ボーダレスネットワークのポートフォリオに加わったのも今回のポイントである。Catalystファミリー最速の848Gbpsのバックプレーンを持つ「Supervisor Engine 7-E」、スロット当たり48Gbpsに対応したラインカード、7または10スロットに対応したシャーシが投入された。
Cisco Catalyst 4500Eシリーズの概要 |
クライアント向けの製品としては、PC向けの「Cisco AnyConnect VPN Client」がバージョン3.0になった。クラウドベースのWebセキュリティやレイヤ2レベルで暗号化を行うMACsecなどに対応している。また、iOS4.1以降のiPhoneに対応したSSL-VPNクライアント「Cisco AnyConnect VPN client 2.4 for iPhone」も発表された。
このほか、最大20Gbpsのマルチプロトコルスループット、1万同時VPN接続といった性能を有するファイアウォール「Cisco ASA 5585-X」、エントリークラスの企業向け無線LANアクセスポイント「Cisco Aironet 1040シリーズ」などが発表された。
「ワールド コネクテッド レポートの結果からは、『必ずしもオフィスで仕事をしなくていいじゃないか。業務をこなせる環境がモバイル、リモートで提供されれば、事足りる』と世界の従業員たちは考えていることが分かった。大げさな言い方をすれば、20世紀の工業化社会は、皆が揃って会社に出社して働くというワークスタイルだったが、知的生産社会である21世紀は、1企業の中に閉じないナレッジが結び付きながらサービスなどを提供していく業務形態に移行しつつある」
木下氏はこのようにも述べたが、果たしてボーダレスネットワークは日本企業のワークスタイルを変えることができるのだろうか――。同氏によれば、今回の発表により、同社製品のボーダレスネットワークへの対応はひと通り完了したという。つまり、シスコの準備は整った。あとはユーザー企業側に委ねられたわけである。