観光地などで休暇を楽しみながら働く「ワーケーション」。コロナ禍で在宅勤務が定着するなか、リモートワークの形態の1つとして注目が集まっている。政府も、苦境にあえぐ観光業界の振興策として、ワーケーション推進に意欲を示している。
だが、普及に向けては解決すべき課題が少なくない。最大の課題は、企業にとっての意義・メリットの明確化だ。さらに、人事・労務面や受け入れ側の環境整備なども進めなければならない。
広がるワーケーションの意義「ワーケーションの意義は多様化している」。企業側のメリットについてそう話すのは、全国に先駆けてワーケーションを推進してきた和歌山県 情報政策課 課長の桐明祐治氏だ。同県は2017年度から首都圏の企業を誘致してきており、2019年度までに100を超える企業がワーケーションを実施。フリーランスも含め、利用者は延べ900人を超えるという。
和歌山県 情報政策課 課長 桐明祐治氏
ワーケーションは、「ワーク」と「バケーション」の2つの言葉を組み合わせた造語だ。元々は福利厚生的な側面が強かったが、和歌山県のワーケーション拠点を活用する企業の間では、これに留まらない取り組みが広がっているという(図表1)。創造性やモチベーションを高めることを目的に自然の中でリモートワークを行う「+イノベーション」「+モチベーション」、地元産業との連携によって地域課題の解決や産業活性化につながるビジネスを創出しようとする「+コラボレーション」といった観点での活動だ。
図表1 和歌山県が考えるワーケーションの意義
実例としては、三菱地所、和歌山県、白浜町の3者の協定(2018年締結)によりスタートしたワーケーション事業がある。同町に開設したワーケーションオフィスを三菱地所のテナント企業に提供し、非日常的空間での仕事を通してイノベーション創出を支援するのが狙いだ。利用企業からは、地元産業との援農体験など、CSR活動の場としても評価されているという。
三菱地所が開設した「WORK×ation Site 南紀白浜」