コアネットワークはSaaS型で小さく始める
「ローカルに基地局設備(RAN)だけを置いて、コアはクラウドで提供するモデルが中心になっていく」
NEC 新事業推進本部長の新井智也氏は、ローカル5Gシステムの構成についてそう予想する。2019年度から同社が行っている実証でクラウドコアへのニーズの高まりを感じており、「RAN設備もNECが持ち、マネージド型で使いたいという期待も高い」。初期コストを抑え、かつユーザーの運用負荷も軽減できるマネージドサービスの提供を検討している。
こうしたクラウドモデルにより、スモールスタートが容易になる。基地局数やデバイス数に応じた月額課金で設備が使えれば、ユーザー数の増減に応じてコストを適正化できる。
NEC 新事業推進本部 本部長の新井智也氏
コンテナ化で「より小さく」クラウドコアの具体的な導入・運用モデルとメリットについて、NECが提供している「SA型5Gモバイルコア」を例に見ていこう。なお、同製品はEPC機能も備えており、NSA構成での利用も可能だ。
クラウドコアの第1のポイントとして「マルチプラットフォーム対応である」ことを挙げるのは、NEC ネットワークサービスBU 第二ネットワークソリューション事業部 事業部長代理の田口広志氏だ。プライベート環境でもパブリッククラウドでも動作し、環境を選ばず使える柔軟性を備えることで、ローカル5Gの普及はより加速する。
NEC ネットワークサービスビジネスユニット 第二ネットワークソリューション事業部 事業部長代理の田口広志氏
さらに、NECは「マイクロサービス、コンテナ技術を使ってクラウドネイティブ化する」(同氏)ことで5Gコアの拡張性も高めている。
最大の利点は、「VM(仮想マシン)と比べて、より小さく始められる」ことだ。コンテナはVMよりも構成単位が小さくなるので、スモールスタートがしやすくなる。
3つめのポイントは、コントロールプレーン(CP)とユーザープレーン(UP)の分離だ。これにより、柔軟な機能配備が可能になる。(1)CP/UPともにクラウド上に置く、(2)CPはクラウドで動かしUPはローカルに置く、どちらの構成も可能だ。
1端末月数百円でスタート(2)の形態を容易に実現するためのソリューションとして、NECではUPF(UP機能)をアプライアンスとして提供する「U-Plane装置」も用意している。「企業でも使いやすい小型ルーター型からキャリア向けの大規模モデルまでラインナップを揃える」(田口氏)。データ量が増えた場合は、装置数を増やすことで拡張できる。
構成を示したのが図表1だ。クラウド上のCPと基地局間では制御信号のみがやり取りされるので、ユーザーデータはクラウドを経由せず既存業務システム等に送ることが可能だ。なお、U-Plane装置は汎用ハードをベースにしたもので、内部でエッジアプリケーションを動かしたり、トラフィックを監視・制御するソフトウェアを稼動させたりすることもできる。
図表1 NEC SA型5Gモバイルコア/U-Plane装置の活用イメージ
NECは、このクラウドコアの機能を月額課金モデルで提供するサービスを計画中だ。詳細は未定だが、「加入者単位で月額数百円」といった課金体系を検討しているという。
他にRAN設備の費用がかかるとしても、初期コスト数千万円でシステムを構築するのに比べればハードルは一気に下がる。運用の大部分もNECに任せられる。
「オンプレミスも否定しないが、クラウド型はかなり有望」と田口氏。2020年内の提供開始を目指して準備を進める。このクラウドコアを使って、SIer等が独自のSaaSサービスを提供することも可能だ。