屋外タワー事業で5G加速 上場したJTOWERの成長戦略

携帯インフラシェアリングのJTOWERがマザーズに上場し、初値が売り出し価格を大幅に上回った。5G時代に同社が果たす役割への市場の期待は大きい。今後は屋外シェアリングを新たな軸に展開する。

通信インフラシェアリングを手掛けるJTOWERは2019年12月、東証マザーズに上場した。初値は公募・売り出し価格の1600円を大幅に上回る2620円。

JTOWER CFOの中村亮介氏は「市場の評価はコントロールできる部分ではない」としたうえで、高い評価を得られた理由は複数あると分析するが「特に大きいのが5Gの到来だ」という。

JTOWER CFO 中村亮介氏
JTOWER CFO 中村亮介氏



5G時代はインフラシェア同社の主力事業はショッピングモールなど大型の建物内向けのIBS(In-Building-Solution)である。

ビルのオーナーおよびゼネコンは従来、建物内に電波を行き渡らせるため、各キャリアに依頼してアンテナ、ケーブル、中継装置といった通信設備を機械室などに設置していた。各キャリアとは個別に調整・工事していたため費用や手間が大きかった。

JTOWERは全キャリアが共有して接続できる通信設備を設置。ビルオーナーから見れば一括で調整及び工事が可能だ。各キャリアには設備を貸し出して利用料を得ており、キャリアにとっても3割から5割ほどのコストカットを目指しているという。

今後、もう1つの主力事業に育てていこうとしているのが、基地局設備を設置する屋外通信鉄塔等(タワー)をシェアリングするタワー事業だ(図表1)。屋外でキャリアが個別に土地所有者に許可を得て建設していたタワーを、JTOWERが土地を購入もしくは借りたうえで建設して貸し出す。

図表1 タワー事業のイメージ

図表1 タワー事業のイメージ

各キャリアはタワーに基地局装置を整備すればよく、タワーの建設/運用保守費用を削減できる。こちらもキャリアから見て3割以上のコストカットが目標だ。

5G用に新たに割り当てられた周波数は、3.7GHz/4.5GHz帯とミリ波の28GHz帯で、4G/LTE用周波数と比べると直進性が高く、障害物に弱いため多くの基地局が必要になる。郊外や山間地など採算がとりづらいルーラル地域へ効率的に展開するうえでシェアリングは有効な手立てとなる。

総務省も2018年12月にインフラシェアリングのガイドラインを出しており、「インフラシェアの重要性に言及している」(中村氏)。

顧客も増える。今春からは楽天が新規キャリアとしてMNOサービスを開始する。「大阪万博やIR(統合型リゾート)など、国内においてビルの開発需要もますます増えている。屋内シェアリングの需要は今後も増える」と中村氏は説明する。これらの要因が積み重なり、屋内外で携帯インフラのシェアリングするJTOWERへの期待が高まっているのだ(図表2)。

図表2 JTOWERの成長見通し

図表2 JTOWERの成長見通し

月刊テレコミュニケーション2020年4月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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