IoT向け通信規格、あるいはLPWA(Low Power Wide Area)と言われて、真っ先にSigfoxを思い浮かべる人は多いだろう。
国内ではIoTの広まりとともに新たなLPWA規格も登場しているが、Sigfoxは2017年2月のサービス開始以来、常にLPWA市場の先頭集団を走り続けてきた。
原則として1国につき1事業者とのみ契約する方式を採用するSigfoxは、国内では京セラコミュニケーションシステム(KCCS)がオペレーターとしてインフラの構築・運用およびサービス展開を担っている。
その特長は、一言で言うと「シンプル」であることだ。
アンライセンスバンドの920MHz帯を利用し、1回あたり12バイトと軽量なデータを1日最大140回送信する。通信速度は上り100bps、下り600bps。このように極めてシンプルな仕様にすることで、デバイスによっては電池で10年程度稼働する低消費電力を実現するほか、デバイスやアプリケーションの構築にかかるコストも抑えることができる。「シンプル、低消費電力、低コストを追求したLPWA規格でSigfoxの右に出るものはない。だから競合する規格もほとんどないだろう」とKCCS 取締役 LPWAソリューション事業部 事業部長の松木憲一氏は自信を見せる。
(左から)ソラコム セールスマネージャーの滑川直人氏、ニチガス執行役員の松田祐毅氏、
KCCS取締役の松木憲一氏
Sigfoxの特長を活かしたユースケースには、ガスや水道の遠隔検針・遠隔監視、子供や高齢者の見守りなどがある。基地局を利用した位置測位は、GPSほど電力を消費せず、GPSの届きにくい屋内の設備なども大まかな位置を把握できるため、最近はコンテナやパレットの位置管理にも活用されている。
KCCSではSigfoxのエリア拡大に積極的に取り組んでおり、当初の計画を前倒しして2019年3月に人口カバー率95%を達成した。
松木氏は、「この95%という数字が非常にインパクトがあった」と語る。
国内のほとんどの場所でつながるようになったのはもちろんのこと、それまで「本当につながるのか」と懐疑的だった企業も本格的に検討・導入に踏み切るようになったという。
その結果、この1年間にSigfoxの導入は加速しており、大規模導入事例も生まれている。なかでも代表的な事例が、日本瓦斯(以下、ニチガス)のNCU(Network Control Unit)「スペース蛍」への採用だ。