――2020年代が始まりました。次の10年に通信事業者が目指すべき方向性についてどのように考えていますか。
カウル 通信サービスプロバイダー(CSP)にとって2010年代は“失われた10年”でした。いくら投資しても、美味しいところはWebのプレイヤーに持っていかれてしまう状況が続いてきました。
今、この流れを変える可能性が生まれています。SDNと仮想化、自動化、IoT、5Gといった技術要素がCSPに成長の機会をもたらしました。
重要なのは、「メガ」「ギガ」を売る従来型ビジネスから脱却すること。つまり、デジタルの価値を提供することです。ターゲットは、通信速度にのみ価値を見出すコンシューマーではなく、ビジネスのデジタル化を推進する企業です。彼らに対してデジタルの価値を提供するデジタルバリュープレイヤー(DVP)へと変貌しなければなりません。
乗り越えるべき3つの変革――具体的に何をすべきですか。
カウル 3つの変革が必要です。
1つはネットワークのフラット化、簡素化です。
現状のネットワークはあまりに複雑です。末端のデバイスで生成されたデータがコアに辿り着くまでにはRAN(無線アクセス)、アクセス、オプティカル、トランスポート、アグリゲーションといくつものステップを経ることになります。
デジタルの時代はデータが生成された瞬間を捉え、データを素早くコアに届けて適したアクションを返せるかが勝負です。そのためにはネットワークをシンプルにして、これまでより格段に素早く柔軟にネットワークをプロビジョニングできるようにしなければなりません。
これを可能にする唯一の方法がフラット化です。レイヤーをなくし、エンドツーエンドでSDN化し、さらに運用を自動化します。
――エッジの活用も重要になりますね。
カウル それが2つめです。デジタル価値を生み出す源泉となるアナリティクス/インテリジェンスをエッジに分散させます。データが生成されるエッジに分散型データセンターを作り、アナリティクスを仕込んでデータから価値を取り出す。この仕組み作りはすでに始まっていますが、重要なのはエッジにセキュリティを組み込むことです。
3つめは、OSS/BSS(オペレーションサポートシステム/ビジネスサポートシステム)の変革です。これも現状は非常に複雑であり、些細な変更にも数カ月を要しています。迅速なプロビジョニングを可能にすること、そして、CSP自身が新たな機能をビルドしたり、バンドルできるようにしなければなりません。